米自動車業界団体トップ、トランプ政権による自動車関税緩和措置を評価
(米国)
ニューヨーク発
2025年05月01日
ゼネラルモーターズやトヨタなど主要メーカーをメンバーとする米自動車業界団体の米国自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は4月29日、ブルームバーグのインタビューに対し、同日発表されたトランプ政権による追加関税の累積停止と1962年通商拡大法232条に基づく自動車部品への追加関税の緩和措置について(2025年4月30日記事参照)、「業界にとっての救済(relief)だ」と評価した。
トランプ政権が発表した緩和策では、(1)232条に基づく自動車・同部品に対する25%の追加関税、(2)国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくメキシコとカナダの原産品の原則全品目に対する25%の追加関税、(3)232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の追加関税という3つの関税措置の間での累積賦課が停止される。また、自動車部品の輸入に対して、一部関税を相殺する制度が導入された。
ボゼーラ氏は「企業は一夜にして供給網や製造拠点を変更することはできず、新工場の建設には数年を要する」と述べ、業界には「滑走路(runway)となる一定の時間を与えることが重要だ」と強調した。今回の措置については「産業界が約束した国内回帰に向けた移行の猶予が与えられた」と評価し、「米国内で製造された車両に与えられる税額控除を有効活用することで、輸入部品や車両の管理が可能になる」との見方を示した。
一方で、政策の不透明性が依然として大きな課題だと指摘している。「今後どの範囲の部品に関税が適用されるか、政策がどれだけ継続されるか、また、貿易交渉がどう進展するのか見通せない」と述べ、業界にとっての不確実性が経営判断を困難にしている現状に懸念を示した。
さらに、カリフォルニア州が導入し、11州が採用するクリーンビークル(CV、注)の販売義務に関しては、「電気自動車(EV)の販売は前向きな動きだが、需要が伴わなければ達成は困難」との認識を示した。販売義務を採用しているニューヨーク州では、EV販売比率35%を目標とするものの、実際の販売比率は10%前後にとどまっており、この乖離を問題視し、連邦議会の非現実的な規制の無効化を求める動きに理解を示した(2025年2月19日記事参照)。また「内燃機関も引き続き重要な収益源で、消費者ニーズに応える必要がある」と述べる一方、電動化への技術革新は進めていくべきだとし、EVと従来型車両のバランスを取った規制と支援策が不可欠だと強調した。
(注)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。
(大原典子)
(米国)
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