見守り介護のシンガポール発スタートアップ、北九州から日本展開へ

(シンガポール、日本)

シンガポール発

2025年05月13日

高齢者の見守り介護ソリューションを開発するシンガポール発スタートアップ、サウンドアイ(SoundEye)は、日本市場での展開について北九州市を起点に本格化する計画だ。同社は20254月に、北九州市に日本法人「サウンドアイ・ジャパン」を設立した。外資のスタートアップが同市に法人を設立するのは、初めてだという。

サウンドアイは、深度画像と音響解析を用いて高齢者の転倒を感知する製品「LASSO」を開発する。カメラを使わずにベッドからの離床をリアルタイムで検知することが可能で、高齢者のプライバシーを守ることができるメリットがある。同社は、2023年度の北九州市のグローバルアクセラレーションプログラム(GAP-K)に採択され、2024年に北九州市の介護施設で同製品の実証実験を行っていた(2024年4月4日記事参照)。

写真 北九州市の介護施設に設置された転倒や起床を検知するサウンドアイ開発の「LASSO」(サウンドアイ提供)

北九州市の介護施設に設置された転倒や起床を検知するサウンドアイ開発の「LASSO」(サウンドアイ提供)

同社のタン・ヤオキーCEO(最高経営責任者)はジェトロの書面インタビュー(2025年5月2日)に対し、同実証実験について、「LASSOの方が、(競合となる)カメラ型のシステムより精度が高く、ベッドマット型センサーより検知が速いことが確認できた」と述べた。誤検知の削減により、アラートが鳴るたびに看護師が呼び出されることを抑制し、看護師の負担も軽減できるという。また、同社製品は設置後の調整が必要なく、移動も容易なほか、モバイルアプリやナースコールのシステムへの統合も可能だ。

タンCEOは日本での展開について、「LASSOを当面、北九州市および九州全域の介護施設や病院で、実証プログラムや提携を通じて展開する」考えを示した。長期的には、「医療や介護事業者、技術パートナーと連携して、日本全域に展開するのが目標だ」とした。同社は現在、日本のほか、米国に進出。今後、人口高齢化と介護従事者不足に直面する東南アジアの国々で展開する方針だ。

さらに、サウンドアイは現在、シンガポール最大銀行DBSの基金から出資を得て、1人暮らしの高齢者を見守る天井照明方式の機器を開発している。同CEOによると、同機器の準備ができた段階で、日本で実証実験を行う計画だ。

(本田智津絵)

(シンガポール、日本)

ビジネス短信 b40f9d708f7fce64