法人税や所得税の減税策を発表、防衛費は拡大へ

(フィンランド)

ロンドン発

2025年05月02日

フィンランド政府は4月23日、2026~2029年の財政計画を発表した。経済成長と安全保障の強化を軸に施策を打ち出した(詳細はフィンランド政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

消費者向けには、購買力の増加を目的として低中所得者への所得税を引き下げ、また現行制度では地方税を含め最高で60%近くに上る所得税の最高税率についても52%へ引き下げる。また、子供の扶養控除を引き上げる。

付加価値税(VAT)についても、食品などに適用されている14%の軽減税率について、2026年以降13.5%に引き下げる。

企業向けの施策としては、2027年より法人税率を現行の20%から18%に引き下げることを発表。また、2026年以降発生した損失については、繰り越し控除を認める期間を25年に延長する。

歳出面では、防衛費の拡大を再確認。2025年4月1日の発表に従い、2029年までに最低でもGDPの3%を防衛費に投じるとした。また、研究開発費も増額し、政府系機関であるビジネスフィンランドやフィンランド研究評議会を通じエネルギー移行や食料生産の新規バリューチェーンの開発などを促進する。さらに、国営IT科学センターを通じ、人工知能(AI)や高性能コンピューティングの研究・開発活動を支援する。

エネルギー関連では、国営送電会社フィングリッドと送ガス企業ガスグリッドの投資能力を強化。これにより、フィングリッドの送電網への投資、ガスグリッドの2035年までの国内水素ネットワークの構築を、それぞれ支援する。

歳出の削減策も発表されている。2026年以降、閣僚の報酬を5%削減し、開発協力予算については年間5,000万ユーロを削減するほか、高等教育向けの予算についても削減する。このほか、普通高校または職業学校で学習するEU・EEA域外の学生に対して授業料を導入することも発表した。歳入増に向けては、経営者組合や労働組合の会員費の控除制度を廃止。ソフトドリンクなどにかかる物品税については増税が発表された。

ただし、開発協力関連では、ウクライナへの人道支援を増額、教育についても、経済成長に資する学位については入学枠を増やすとしている。

今回の発表に対し、フィンランド商工会議所は法人税の引き下げと所得税の最高税率の引き下げを歓迎した。フィンランド産業連盟も発表に対し歓迎の意を示している。

一方、一部の経済学者からは、政府目標の政府債務比率の安定化の達成について、疑問の声が上がっているほか、野党からも減税による恩恵を受けるのは高所得者層であるとして批判が上がっている(「yle」4月24日、4月25日、4月28日)。

(山田恭之、半井麻美)

(フィンランド)

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