米国関税政策の影響に対する追加支援特別条例が行政院を通過

(台湾、米国)

調査部中国北アジア課

2025年05月02日

台湾の行政院は4月24日、米国の関税政策が台湾の産業と雇用に与える影響に対処するための措置として、4月4日に発表した総経費880億台湾元(約3,872億円、1台湾元=約4.4円)の「9つの主要分野と20項目の対策」(2025年4月11日記事参照)を拡大し、総経費4,100億台湾元からなる「国際情勢に対応した経済社会および台湾の安全とレジリエンスを強化する特別条例」草案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、同草案)を承認した。

同草案は、「産業の支援、雇用の安定、民生の保護、強靭(きょうじん)性の強化」の4つの軸に基づき、次の10の措置が盛り込まれた。(1)企業への金融支援、(2)産業競争力の強化、(3)企業の市場多角化・開拓支援、(4)労働者の雇用安定支援、(5)農業への金融支援強化、産業競争力向上、市場多角化・開拓支援、(6)高等教育による人材育成の強化、(7)台湾電力、全民健康保険、労働保険基金への補助金投入、(8)社会的弱者層へのケア強化と関連サービスの提供、(9)防衛力の強化、(10)情報通信事業の環境と設備のアップグレード(各項目の予算金額は添付資料表参照)。

このうち、(1)~(5)については4月4日発表の「9つの主要分野と20項目の対策」にて既に発表しており、今回の法案により当初の880億元から50億元上乗せされ930億元になった。(6)~(8)については民生分野を対象としており、物価の安定を重視し、(7)には台湾電力に対する1,000億台湾元の補助(注)が含まれている。

卓栄泰行政院長は、同草案の施行期間は2025年3月12日~2027年12月31日とし、米国の鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税が発動した2025年3月12日に遡及(そきゅう)して施行することにより法案成立までのタイムラグをカバーするとした。また、財源は全額、前年度会計の残高から振り替える予定となっている。

台湾電力への補助金注入について、与党・民進党は2025年の通常予算に台湾電力への1,000億台湾元の補助を盛り込んでいたが、野党の国民党および民衆党の反対により同予算は削減された。野党は同草案に台湾電力の補助金が含まれることに対し、米国の関税政策関係ない支出を含めてといるとして、批判を強めている。

(注)台湾の電力価格は産業競争力維持のために当局が補助金を投入し、価格を安く抑えているが、公営電力会社の台湾電力は赤字が続いている。2025年の電力価格は、住宅用は平均2.77台湾元/キロワット時(kWh)、産業用は平均4.27台湾元/kWh。

(江田真由美)

(台湾、米国)

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