BOEが4カ月前倒しで最先端の有機EL工場に設備搬入、首位のサムスンを猛追
(中国)
上海発
2025年05月28日
中国大手ディスプレーメーカーの京東方科技集団(BOE)は5月20日、四川省成都市で同社中国初の第8.6世代(注)アクティブマトリックス式有機EL(AMOLED)工場(2023年12月12日記事参照)に、予定より約4カ月早く製造装置の搬入を開始した。同工場は2024年第1四半期に着工し、同年9月に前倒しで完成した。
成都工場の総投資額は630億元(約1兆2,600億円、1元=約20円)で、四川省最大級の単一投資プロジェクトだ。BOEはディスプレーを駆動する「低温多結晶酸化物(LTPO)」などの先端技術を採用し、有機ELの低消費電力・長寿命を実現させるほか、川下のノートパソコンやタブレット端末などのアップレートにもつながると期待している。同社はすでに成都市、重慶市、四川省綿陽市に第6世代フレキシブルAMOLEDの生産ラインを設けており、新工場が稼働すれば、より一層の生産能力向上につながる見込みだ。
情報プラットフォームの群智諮詢(シグマインテル)の発表によると、2025年第1四半期(1~3月)の世界のスマートフォン向けパネル出荷量は約5億4,000万枚で、ほぼ前年同期並みの水準となった。うち、BOEの出荷量は全体の24.3%に当たる約1億3,200万枚で、サムスンディスプレー(SDC)の出荷量約8,100万枚(市場シェア14.9%)を上回って首位を維持しているが、有機ELの出荷量に限ると、BOEは約3,600万枚とSDCの出荷量(8,100万枚)の半分にも到達しなかった。SDCはすでに液晶パネルの生産を打ち切り、高画質・高性能の有機ELに経営資源を集中させているが、BOEも今後、主力製品だった液晶パネルから有機ELへの移行を急ピッチで進め、SDCを追撃していくとしている。
(注)「第〇世代」はディスプレーの基になるガラス基板のサイズを表すもので、次世代ほどサイズが大きくなり、第8.6世代は2,290×2,620ミリメートル(㎜)。ディスプレーは液晶、有機EL、マイクロLEDなどに分類される。
(劉元森)
(中国)
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