米商務省、AI半導体などへの輸出管理を強化する暫定最終規則の撤回方針を発表
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年05月15日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は5月13日、ジョー・バイデン前政権時代に発表された人工知能(AI)向け半導体などへの輸出管理を強化する暫定最終規則(IFR)を撤回する意向を発表した。バイデン前政権は2022年10月以降、先端半導体を中心に、段階的に輸出管理を強化した。前政権から大きく方針転換することになる。
撤回が発表されたIFRは、通称「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」と呼ばれ、先端AIモデルの開発に不可欠とされる先端コンピューティング集積回路(IC)を新たに規制対象とすることなどを定めていた。1月15日付の官報で公示し、企業は5月15日からIFRを順守する必要があった(2025年1月14日記事参照、注1)。BISは発表で、これらの新たな要件は米国のイノベーションを阻害し、企業に過度の規制負担を課すものだとし、商務省で輸出管理を管轄するジェフリー・ケスラー次官はIFRを執行しないよう指示したとしている。BISは今後、IFRの撤回について官報で正式に公示する。
ケスラー氏はBISの発表で「トランプ政権は信頼できる外国と協力して、米国のAI技術に関する大胆で包摂的な戦略を推進しつつ、敵対勢力の手から技術を遠ざける方針だ。同時に、バイデン政権が米国民に押し付けようとしている不適切で逆効果のAI政策を否定する」と述べた。トランプ政権2期目の発足以降、これまで米国半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のAI向け半導体「H20」を輸出管理対象に加えたとする報道はあったが(2025年4月17日記事参照)、トランプ政権の輸出管理の方針が公に発表されたのは今回が初めてとなる(注2)。
BISはそのほか、中国の華為技術(ファーウェイ)製半導体の使用リスク、米国製AI半導体が中国のAIモデルの開発や推論に利用されるリスク
、半導体転用リスク
に関するガイダンスも発表した。
(注1)IFR自体は1月13日から効力を有するが、企業がIFRに定められた規則に対応するため、猶予期間が設けられていた。
(注2)商務省の広報官は5月7日、AI拡散規則の見直しに言及していた(2025年5月13日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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