ブラジル中銀、6会合連続の利上げ決定、政策金利は14.75%に
(ブラジル)
調査部米州課
2025年05月20日
ブラジル中央銀行は5月6~7日に金融政策委員会(Copom)を開催し、政策金利(Selic)を14.25%から14.75%に、50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げた。2024年9月の会合以降6回連続の利上げとなった。利上げ幅は3月の前回会合時(100 bp)から縮小した。ただ、トランプ米政権の保護主義的な政策による不確実性や、国内のインフレ圧力により、引き締め基調が続いている。
Copom開催後に公開された中銀の声明文によると、利上げの理由として、外的要因に、世界経済見通しの不確実性による新興国市場経済への影響を上げた。米国の関税政策が世界の通商動向に与える不確実性や、これによる世界の景気減速が懸念される中、新興国経済の先行きに関する不透明感が高まることが懸念されている。また、内的要因には、経済活動と労働市場の活性化が続く中で、総合インフレ率がインフレ目標値を上回ったことなどを指摘した。中央銀行の週次レポート(5月12日付)FOCUSによると、2025年のIPCA(拡大消費者物価指数、注)予測は5.51%。これは、中銀が設定する2025年のインフレ目標値3%±1.5%(1.5~4.5%)を上回っており、インフレの再燃が危惧される。声明文では、物価動向について「上振れ、下振れともに、リスクが高まっている」と言及した。上振れリスク要因には、インフレ期待の長期化や、持続的な通貨安などを挙げ、下振れリスク要因として、国内経済活動の減速や、貿易の不確実性が増大することによる世界的な景気減速、ディスインフレに伴う市況品価格の下落などを挙げた。
ブラジルは、トランプ米政権が課す世界共通関税(10%の追加関税措置)、鉄鋼・アルミニウム製品への25%の追加関税措置、自動車・自動車部品に対する232条追加関税の対象になっている。ブラジル産アルミニウム製品にはこれまで、米国側で10%の追加関税が賦課されていたが、3月12日に25%に引き上げられた。鉄鋼製品については、2018年に米国がブラジルからの鉄鋼輸入に対して約350万トンを割り当て、その範囲内で追加関税を除外していたが、3月12日以降、国別例外措置が撤廃された。なお、自動車・同部品のブラジルから米国向け輸出については、量が少なく、ブラジル自動車産業への影響は限定的とみられる。
(注)ブラジルの代表的な物価指数。
(辻本希世)
(ブラジル)
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