香港国家安全維持条例の付属法令が施行、安保リスクの予防が目的と説明

(香港、中国)

香港発

2025年05月20日

香港特別行政区政府は5月13日、国家安全維持条例(国安条例)に基づいた2つの付属法令の作成を承認し、香港国家安全維持法の公布によって2020年7月に香港に新設された中央政府駐香港国家安全維持公署(国安公署)の任務に関して、次のように具体的な内容を規定した。なお、同付属法令は同日に官報に公告、即日施行した。

(1)香港の国家安全を守るために責務を担う香港国家安全維持委員会が国安公署の監督と指導に関する全体的な計画を立て調整し、香港国家安全維持法の関連規定を効果的に実施するために支援する。

(2)香港国家安全維持法第55条は、国家の安全を脅かす分離独立や、国家権力の転覆、テロ活動、外国・外部勢力との共謀に関与が疑われる事件で、香港当局の法執行が困難な場合など特定の状況に該当する場合、中央人民政府の承認を得て、国安公署が管轄権を行使することができると定めている。この目的のため、付属法令は、公務員が合理的な援助を全て適切に国安公署に提供することなどを定めている。

(3)香港のあらゆる政府機関、公務員に対し、法律に従って国安公署に必要かつ合理的な援助、便宜、支援、支持、保障を適時提供することを義務化した。

(4)国安公署が職務を遂行する6カ所の場所を立ち入り禁止区域とした。立ち入り禁止区域の範囲は、国安公署が単独で占有する敷地とし、民間の住宅敷地は含まない。具体的な場所については、香港メディア「大公文匯」(5月14日付)によると、銅鑼灣道148号、城市花園道9号、干諾道西152号、九龍暢通道1号、九龍海輝道興深旺道交界、九龍海帆道となる。

香港政府のスポークスマンは、付属法令の整備は突発的に発生する香港の国家安全保障上のリスクを予防するのが目的と説明した。また、付属法令の整備によって、一般市民の生活に影響を与えるものではないとし、指定された立ち入り禁止場所は個人の住居に関係なく、周辺地域社会にも不利益を与えるものではないと強調した。

中国国務院の香港マカオ事務弁公室が主管するシンクタンク「全国香港マカオ研究会」の劉兆佳(ラウ・シウカイ)氏は、治安当局の動きは「貿易戦争を通じた中国の封じ込めと孤立を狙った米国のドナルド・トランプ政権の戦略への対応だ」と指摘した(「サウスチャイナ・モーニングポスト」5月14日)。

(松浦広子)

(香港、中国)

ビジネス短信 9a178fc72a37c021