原子炉施設管理法の修正案が立法院通過、原発再稼働に道筋
(台湾)
調査部中国北アジア課
2025年05月19日
台湾で5月13日、原子炉施設管理法の修正草案(核子反應器設施管制法)が立法院(国会に相当)で3度目の審議(第三読会、注1)を通過し、可決した。草案では、現行法で原子炉の稼働期間を40年と定めた第6条について、稼働期間が40年満期となった場合、経営者は主管機関の定める期限内にライセンスの更新申請を行うことが可能で、更新期間は最長20年とされた。同草案は与党・民進党の電力政策を批判する野党の国民党、民衆党を中心に提案、可決された。
台湾では、2016年以降の民進党政権下で、2025年脱原発政策(非核家園2025)が推進されており、5月17日には現在唯一稼働中の第3原子力発電所2号機が40年の運行期限を迎えて稼働停止し、域内の原発はゼロとなった(注2)。民進党政権は2025年の総発電量に占める再生可能エネルギー比率を20%とすることを目標としてきたが、台湾経済部によると、2025年の再エネ比率は15%にとどまる見込みだ(2024年7月17日記事参照)。半導体やAIサーバーなどのAI関連機器の需要が好調に推移し、台湾域内の投資が活発に行われる中、野党や産業界からは脱原発による電力需給の逼迫と電力価格高騰への懸念が指摘されてきた。5月18日に経済部が発表したプレスリリースによると、第3原子力発電所2号機が発電に占める割合は約3%で、既に天然ガスや水力などほかの電力系統を調整しており、電力供給に問題はないとしている。
経済部は草案の通過についてプレスリリースを発表し、「草案の可決は原発の運転延長や再稼働に法的根拠を与えた。今後は主管機関による細則や原子力安全検査要件の改正を待つ必要がある。その後ようやく台湾電力による評価が可能になる」とした。
また、原子力安全委員会も13日にプレスリリースを発表し、「原子力発電の利用は原子力安全の確保、核廃棄物の処分、社会的コンセンサスの確保を前提とすべきだと繰り返し述べてきた。もし発電所が期間満了後も運転を継続する場合、経済部と台湾電力が現状の設備について、法律・法規の要件や国際的な安全基準・慣行に従って、発電所の運転継続の安全性、実現可能性、効果を評価し、ライセンス更新申請を提出するかを決定しなければならない」との見解を示した。
(注1)台湾の立法院で法案が成立するには、3回の可決が必要で、各会の審議を第一読会、第二読会、第三読会という。
(注2)台湾には4カ所の原子力発電所があるが、第1原子力発電所(新北市)は2019年、第2原子力発電所(新北市)は2023年、第3原子力発電所(屏東県)1号機は2024年に、原子炉運行期間満期により停止、第4原子力発電所(新北市)は反対運動などにより、2014年に建設が中止された。原子力発電所の位置は台湾電力のウェブサイト参照。
(江田真由美)
(台湾)
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