製造業・サービス業の業況見通し悪化、米国相互関税の影響懸念

(シンガポール)

シンガポール発

2025年05月08日

シンガポール経済開発庁(EDB)は4月30日、製造業の企業を対象に実施した調査で、2025年第1四半期(1~3月)と比較した同年4~9月の業況見通しのDI値がマイナス6だったと発表した(注1)。また、統計局が同日発表したサービス業の企業を対象にした調査結果では、同時期のDI値がマイナス17だった(注2)。米国相互関税などを背景とした先行き不透明感が深まる中で、製造業とサービス業ともに、向こう6カ月の業況見通しが悪化した。

EDBによると、製造業の企業で第1四半期と比較して、4~9月の業況が改善すると答えた割合は13%だった一方、悪化すると答えた企業は19%だった。部門別にみると、最も業況見通しが悪化すると答えたのは化学部門(DI値:マイナス22)だった。次いで、エレクトロニクス部門(マイナス9)、バイオメディカル部門(医薬品・医療機器、マイナス8)が続いた。

統計局によると、サービス分野の企業で第1四半期と比較して、4~9月の業況が改善すると答えた割合は、8%にとどまった。一方、業況が悪化すると答えた企業は25%だった。部門別にみると、最も業況見通しが悪化したのは金融・保険部門(DI値:マイナス36)で、次いで小売り部門(マイナス34)、飲食サービス部門(マイナス31)が続いた。

対米輸出の54.6%が基本関税10%の対象

米国はシンガポールの地場輸出(注3)の11%を占め、国・地域別で第2位の輸出先となっている。シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)が4月28日に発表したマクロ経済報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、シンガポールの対米地場輸出品目のうち、米国による10%の基本(共通)関税の対象となる品目は、2024年の輸出実績で54.6%に上る。半導体や半導体関連機器、医薬品などの基本関税対象の除外品目となるのは40.0%。残り5.4%は鉄鋼・アルミニウムと自動車部品で、25%の追加関税の対象となる。

(注1)DI値はDiffusion Indexの略で、業況が「改善」すると回答した企業の割合から、「悪化」すると回答する企業の割合を差し引いた数。EDBは2025年3~4月に同国の製造業の企業408社を対象に調査を実施し、87%が回答した。

(注2)統計局は2025年3~4月に、卸売り取引や小売り、輸送などサービス業分野の企業約1,500社を対象に調査を実施。

(注3)シンガポール国内で生産された物品の輸出。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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