欧州産業連盟、欧州委のオムニバス法案に関する提言書を発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年05月19日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は4月30日、欧州委員会が2月26日に発表した持続可能性関連のデューディリジェンス(DD)実施義務や開示義務を大幅に簡素化するオムニバス法案(2025年3月7日記事2025年3月7日記事参照)に関する提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。(1)企業の負担軽減、(2)法的確実性、(3)一貫した法的枠組み、(4)EUレベルでの規制の調和、(5)中小企業への影響を軽減、の5点を指針とし、規制簡素化を進めるべきとした。

まず、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)、企業持続可能性報告指令(CSRD)とタクソノミー規則の3法令の横断的課題として、適用対象と気候変動の緩和への移行計画の開示要件に関し、法令間で一貫性がない点を指摘。EU加盟国による国内法化の際、ルールが異ならないよう、適用範囲や用語を明確に定義する必要があるとした。このほか、各法令に関する主な提言は次のとおり。

(1)CSDDD

  • DDの対象とするリスクの特定には、直接取引先についてもリスクベース・アプローチをとる。間接取引先を対象とする場合、「負の影響に関する信ぴょう性の高い情報」といった新たな概念を導入するのではなく、強制労働製品禁止規則(2024年11月22日記事参照)など既存の基準を活用する。
  • 民事責任について、EUレベルでの責任を削除する案だが、連帯責任など残っている関連規定を削除し、整合性をとる。また、法案では、加盟国当局が企業に対し、事業活動などの変更を要請できると解釈される条項がある。加盟国当局による企業への干渉を抑止し、適正な手続きを行うための仕組みを導入する。

(2)CSRD

  • 欧州持続可能性報告基準(ESRS)に関し、データポイント(具体的に開示すべき情報の単位)の数や企業の作業負担を大幅に削減し、サステナビリティ報告に必要な質の高い情報に限定する。機密性の高い企業情報を非開示とする条項を強化する。
  • 監査法人などによる第三者保証に関し、EUレベルの監査基準を早期に策定する。同基準は、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)が策定した全てのガイドラインの任意性を認め、監査法人などに法的拘束力を持つものとして扱われないように明示する。
  • EU域外企業についても域内企業と同様、従業員1,000人以上の場合に適用対象とする。

(3)タクソノミー規則

  • 報告のためのひな型について、不要な報告義務の重複事項が残っており、さらに簡素化する。

(滝澤祥子)

(EU)

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