米国クリーンエネルギー投資、政策不透明さで縮小・鈍化、ジェトロの環境エネルギー月例レポート(2025年4月)
(米国)
ニューヨーク発
2025年05月12日
ジェトロは5月9日、米国の対環境エネルギー政策動向についてまとめた2025年4月分の月例レポート(448KB)を公表した。このレポートは、日本企業が米国の環境・エネルギー政策に関する動向を把握できるよう、毎月作成して特集ページに連載している。
トランプ政権および共和党優勢の連邦議会がバイデン前政権のクリーンエネルギー投資政策を大幅に見直す方針を示す中、2025年初頭から米国内のクリーンエネルギー関連投資の後退が顕著となっている。超党派ビジネス団体E2によると、2025年1~3月の3カ月間で米国内の大型クリーンエネルギー関連プロジェクトが新たに16件撤回され(縮小・停止を含む)、その投資撤回額は総額で約80億ドルに相当する。
特に2~3月は、計13件のプロジェクト(総額50億ドル相当)が撤回・縮小に追い込まれた。バッテリー・蓄電部門では、マグニス・エナジー・テクノロジーズ、コアパワー、フライヤーバッテリーなど複数企業が生産工場の縮小や計画撤回を発表し、同部門全体で42億4,000万ドル相当の投資が失われた。
電気自動車(EV)など業務用クリーン車の市場低迷を背景に、ボルグワーナー、カノー、ニコラ、アスペンエアロジェルズなどが工場閉鎖や計画撤回を行い、EV部門だけで6億4,500万ドルの投資が消失。水素部門では、エアプロダクツとボッシュが合計7億ドル相当のプロジェクトを撤回した。さらに、太陽光発電でソーラーパートナーが発電施設の3分の2を閉鎖(22億ドル相当)、風力発電ではプリズミアンが2億ドルのケーブル生産施設の計画を取り消すなど、各部門で投資撤回が広がっている。
一方、データセンターの拡大に伴う電力需要増加を背景に、電力網関連への投資は依然として継続している。ABBは、ミシシッピ州とテネシー州でグリッド・送電線インフラ機器製造に計1億2,000万ドルを投資すると発表。TSコンダクターも、サウスカロライナ州での新規製造工場の建設に1億3,400万ドルを投資する計画を明らかにした。シュナイダー・エレクトリックも、2027年までに米国市場で過去最大となる7億ドル以上の投資計画を打ち出しており、テネシー州での中圧機器製造工場新設など複数州での配電関連施設拡張を進める方針だ。
本レポートではそのほか、米国内外の主要企業の最新動向も併せて紹介している。なお、第2次トランプ政権の動向のページから動向情報が随時確認できる。
(藤田ゆり)
(米国)
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