プラスチック廃棄物の循環利用技術は欧州がリード
(EU、欧州)
デュッセルドルフ発
2025年05月13日
欧州特許庁(EPO)の観測部門(Observatory)は4月29日、プラスチック廃棄物の循環利用技術に関する特許出願動向調査報告書を公表した(プレスリリース
)。
報告書は、1975年から2023年までに出願された、プラスチック廃棄物の循環利用に関する1万2,924件の国際特許ファミリー(IPF、注1)の特許出願に基づいている。なお、プラスチック廃棄物の循環利用技術は、プラスチック廃棄物の回収(分離と精製)およびリサイクル(新しい材料への変換)に関する発明で構成される。
このプラスチック廃棄物の循環利用技術分野の特許出願は、1990年から2023年までの間に約18倍に増加し、全ての技術分野を合わせた特許出願の増加割合と比べて4倍以上の速度で増加している。特に、この増加傾向は2015年ごろから強まり、2020年代になって一段と加速しており、この分野の技術革新が急速に進んでいることが推測される。
欧州は1990年から2023年にかけて、一貫してこの分野の特許出願件数でリードしており、2023年は欧州〔欧州特許条約(EPC)加盟国、注2〕が46%、次いでアジアが27%、北米が25%となっている。ただし、国別にみると、1995年以降、この分野におけるトップ3は米国、日本、ドイツがほぼ毎年ランクインしており、2023年はこれらの3カ国で全体のほぼ半数(米国22.99%、日本13.17%、ドイツ11.51%)を占めている。
同分野の最新の特許出願情報は、EPOウェブサイトのプラスチックに特化した技術プラットフォーム「プラスチック・イン・トランジション」で誰もが無料で閲覧可能だ。プラットフォームでは、プラスチック廃棄物の回収、リサイクルに加え、代替プラスチックに関する技術における70の細分化された技術分野について検索可能で、80カ国超の特許出願情報をカバーしている。
(注1)国際特許ファミリー(International Patent families)とは、公開された国際特許出願や国内特許出願を含む、同じ発明に対する一連の出願のこと。したがって、複数国・地域に出願されていても発明が同じであれば、ファミリー1件としてカウントされる。
(注2)欧州特許条約(EPC)加盟国は、EU加盟国27カ国に加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、モンテネグロ、北マケドニア、ノルウェー、セルビア、スイス、サンマリノ、トルコ、アルバニア、英国を含む39カ国。
(吉森晃、佐藤吉信)
(EU、欧州)
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