3月CPI上昇率、前年同月比1.8%の低水準、政策金利は5.50%に引き下げ
(フィリピン)
マニラ発
2025年05月01日
フィリピン統計庁(PSA)は4月4日、3月の消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)は前年同月比1.8%で、前月の2.1%および2024年3月の3.7%を下回ったと発表した(添付資料図参照)。2020年5月に記録した1.6%以来、4年10カ月ぶりの低水準となった。コアインフレ率(注1)は2.2%で、前月の2.4%、2024年3月の3.4%より低下した。1月から3月までの平均インフレ率は2.2%で、フィリピン政府が定める2025年のインフレ率目標2.0%~4.0%の範囲内に収まっている。
PSAは3月のインフレ率低下に寄与した要因として、「食品およびノンアルコール飲料」「輸送」「外食・宿泊サービス」を挙げている。「食品およびノンアルコール飲料」は前月に続いて低下し、2.6%から2.2%に鈍化した。特にコメが2020年3月以来最大のマイナス7.7%だったことが寄与した。「輸送」はマイナス1.1%で、前月のマイナス0.2%からさらに低下した。「外食・宿泊サービス」は前月の2.8%から2.3%に鈍化した。
インフレ見通しの緩和を受け、フィリピン中央銀行(BSP)は4月10日に開催された金融政策定例会合で、政策金利(RRP)を2会合ぶりに25ベーシスポイント(bp=0.01%)利下げし、5.50%にすると決定した。2024年8月以降、今回を含めて4回の利下げを決定しており、合計1.00ポイントの引き下げを実施することになる。また、BSPは利下げに併せて、2025年のインフレ率予測を3.5%から2.3%と大幅に修正した。2026年も3.7%から3.3%に下方修正した。
フィリピン経済企画開発省(DEPDev、注2)のアルセニオ・バリサカン長官は4月4日、物価安定が続く中、政府の対策は依然として有効という考えを述べた。同国政府はこれまで、インフレ率の安定化に向けて、ラニーニャ現象への対策計画や、農家への燃料支援プロジェクト、アフリカ豚熱(ASF)ワクチンの早期商業利用化に向けた畜産業界のモニタリングなどの実施を発表している(2025年3月21日記事参照)。また、バリサカン長官は、フィリピン政府として米国が提示した相互関税(17%)への影響(2025年4月14日記事参照)は認識しているものの、これにかかわらず、「健全なマクロ経済の基本を維持し、ビジネス環境の改善、既存の貿易協定の最大活用、新たなパートナーシップ構築」を引き続き注視すると述べた。
(注1)相対的に価格変動が大きい特定の食品とエネルギーの項目を計算から除いたインフレ率のこと。
(注2)発言当時はフィリピン国家経済開発庁(NEDA)。4月10日に共和国法第12145号に署名されたことにより、庁から省に格上げされた。
(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)
(フィリピン)
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