テンセントクラウドと越疆科技、協働ロボット分野で戦略連携を強化

(中国)

上海発

2025年05月22日

中国IT大手の騰訊(テンセント)のクラウド部門「騰訊雲(テンセントクラウド、以下「テンセント」)」は5月12日、協働ロボット大手の深セン越疆科技(Dobot Robotics、以下「Dobot」)と戦略的提携を深化させ、エンボディドAI(Embodied AI、注)を活用した人型ロボットの産業化の加速を目指す合意書を締結したと発表した。両社は、クラウドコンピューティングおよび産業のインフラ建設を進めることで、製造業、商業、教育など多くの分野でのエンボディドAI(人工知能)の実用化を推進する。

提携の詳細内容については次のとおり。

〇エンボディドモデルの訓練

Dobotが開発した視覚・聴覚を持つ動けるエンボディドモデルと、テンセントの高性能GPUやネットワーク、ストレージなどのクラウド基盤を融合し、クラウド大規模モデルを活用することで、訓練の効率と精度を向上させ、複雑な作業環境での意思決定能力を強化する。

〇低遅延遠隔制御システムの開発

テンセントのリアルタイムコミュニケーションププラットフォームを活用し、安定性が高く、低遅延のビデオ通話・音声通話を通じて、ロボットに対する低遅延のリモート制御を実現する。製造現場や災害対応など、遠隔操作が求められるシーンでの応用が期待される。

〇教育分野での実証拡大

教育分野では、テンセントの教育プラットフォームとDobotのロボット教材を組み合わせることで、AI人材育成プログラムを共同開発する予定。また、製造業、小売り、ビジネス業界などの分野向けにエンボディドAIが活用できる新たなアプリケーションや応用シーンの共同開発を進め、「働ける」ロボットの開発加速を求める。

情報産業研究プラットフォームであるIIM信息産業管理のレポートによると、2025年のグローバルにおける協働ロボット産業市場は150億ドル超え、中国市場の構成比は全体の35%を上回ったとされている。また、2025年にリリースされる新機種の92%には高度な学習機能が付いているという。

中国政府は、ロボット産業の発展を支援している。3月5日に開幕した第14期全国人民代表大会(全人代)第3回会議の政府活動報告では、エンボディドAIのような将来性の高い産業、また、大規模言語モデルの応用を支援し、スマートロボットを含む新世代スマート端末・スマート製造設備の発展をサポートするとした。

(注)エンボディドAIは、物体を操作したり、人とコミュニケーションをとり物理的な作業を支援したりする、身体性を持つエージェントベースのAIシステムのこと。具体的には複数の感覚システム(視覚、触覚、聴覚など)を備えた自律的に学習するAI技術。

(龐婷婷)

(中国)

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