習国家主席がルーラ大統領と会談、エネルギー、デジタル、AIなどで協力拡大

(中国、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、ウルグアイ)

北京発

2025年05月16日

中国の習近平国家主席は5月13日、北京市でブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領と会談を行った。ルーラ大統領は5月10日から14日にかけて中国を公式訪問し、中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)フォーラムの第4回閣僚会合(注1)に出席した(ブラジル側の発表については2025年5月15日記事参照)。

習国家主席は会談で、両国が中国・ブラジル運命共同体(注2)の建設を推進し、発展戦略の連携を強化し、グローバルサウス諸国の団結・協力を牽引する役割を担っているとしたうえで、各レベル・全方位の往来を強化し、インフラ、農業、エネルギーなどの協力を強化するとともに、エネルギー転換、航空・宇宙、デジタル経済、人工知能(AI)などの協力を拡大すると強調した。また、両国が国連やBRICSなどの枠組みにおける調整・協調を強化し、多国間主義を堅持し、グローバルガバナンスの改善、国際貿易秩序の維持に取り組み、単独主義、保護主義、いじめ行為に対して明確に反対するとした。

中国外交部の発表によると、ルーラ大統領は、ブラジルが「一帯一路」イニシアチブと連携し、経済貿易、インフラ、金融などにおける協力を強化するほか、国際問題において中国との戦略的協力を強化し、グローバルサウスの共通利益、国際正義を守ることを望んでいるとした。

会談後、両国の発展戦略の連携、科学技術、農業、デジタル経済、金融、検疫検査、メディアなど20項目の協力文書が締結された。また、「公正な世界と持続可能な地球の構築に向けた中国・ブラジル運命共同体の強化および多国間主義の維持に関する共同声明」が発表された(注3)。同共同声明では、両国が金融協力の最適化や地域間の相互連結など各分野の実務協力を推進するほか、国連を中心とした国際秩序、WTOを中心とした多国間貿易体系の維持に取り組み、国連および国連安全保障理事会における発展途上国の代表性を高める改革を支持することなどが盛り込まれた。

ルーラ大統領は同日、李強首相とも会談した。また、5月12日には「中国・ブラジルビジネスフォーラム」に出席した。同フォーラムには両国の政府機関、企業から400人超が参加した。

(注1)中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)フォーラムの第4回閣僚会合は5月13日に北京市で開催され、「中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体による重点分野の協力に関する共同行動計画(2025~2027)」が発表された。計画では、(1)中国とラテンアメリカ・カリブ諸国共同体との政治関係の強化、(2)発展戦略の連携、(3)民間交流の推進、(4)サイバーセキュリティーや気候変動などグローバルな課題への対応などに関する協力の内容が盛り込まれたほか、各分野の協力を支援するため、中国が660億元(約1兆3,200億円、1元=約20円)の人民元貸出枠による資金を提供するとした。また、中国外交部は5月15日、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、ウルグアイの5カ国に対して、2025年6月1日から2026年5月31日までの期間、30日以内の中国滞在についてビザを免除すると発表した。

(注2)習国家主席は2024年11月にブラジルを公式訪問し、ルーラ大統領と会談を行い、両国関係を「公正な世界と持続可能な地球の構築に向けた中国・ブラジル運命共同体」に引き上げた。

(注3)同時に、「ウクライナ危機に関する共同声明」も発表された。同共同声明では、中国とブラジルはロシアとウクライナが衝突終結に向け早急に直接対話することを望むとし、グローバルサウス諸国とともに、ウクライナ危機の解決に向けて引き続き努力するとした。

 

(張敏)

(中国、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、ウルグアイ)

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