ルーラ大統領がロシアを公式訪問、和平の重要性と保護主義政策に反対する姿勢を強調
(ブラジル、ロシア)
調査部米州課
2025年05月13日
ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は5月8~10日にロシアを公式訪問した(5月7日付現地政府系メディア「アジェンシア・ブラジル」)。ロシアに滞在中、ルーラ大統領は、首都モスクワで開催された第二次世界大戦の終了を祝う戦勝記念日の80周年記念式典に出席するとともに、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と首脳会談を行った。首脳会談では、対ウクライナ戦争について協議し、そのうえで2国間のさらなる貿易拡大を約束した(5月10日付現地政府系メディア「アジェンシア・ブラジル」)。
プーチン大統領との首脳会談の中でルーラ大統領は、ロシアとウクライナ間の戦争について「常に平和について考えている」と述べ、早期終結を望む考えをあらためて明らかにした。また、ブラジルの立場は「相手国の領土占領に反対するものだ」と強調し、プーチン大統領に対し「2カ国が望む限り、交渉に参加することに協力する」と伝えた。ルーラ大統領は、ブラジル政府があくまでも交渉によって戦争の終結を望み、そのうえで和平を重んじる立場を強調した。ルーラ大統領は会談後の記者会見の中でも、あらためて平和の重要性に言及した。そのうえで、米国トランプ政権が発動する保護主義的な関税政策を批判し「米中間の関税戦争による保護主義の復活は誰の得にもならない。われわれが望むのは、より柔軟で公平な貿易であり、(経済規模の)小さな国に対して良好な政策をとることだ」と述べた(5月10日付現地政府系メディア「アジェンシア・ブラジル」)。
ブラジル開発商工サービス省の統計データCOMEXSTAT によれば、2024年のロシアとブラジル間の貿易は、ブラジルが95億1,500万ドルの貿易赤字だった。ブラジルからの主要輸出品目は、大豆、牛肉、コーヒー豆、鶏肉といった農産品。ブラジルはロシアから、ディーゼル油や肥料を輸入する。ディーゼル油はブラジルの対ロ輸入額(2024年)の約半分を占めている。また、ブラジルにとってロシアは肥料の重要な供給国であり、大豆などの生産規模が大きいブラジルにとってロシアと良好な関係の構築は重要だ(2022年2月24日記事参照)。2025年7月にブラジルのリオデジャネイロ市で開催予定のBRICS首脳会合には、プーチン大統領の参加も予定されている。
(辻本希世)
(ブラジル、ロシア)
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