IMF理事会、レビューを経て約10億ドル融資を決定
(パキスタン)
カラチ発
2025年05月13日
IMF執行理事会は5月9日、パキスタンへの約70億ドルの追加融資プログラム〔拡大信用供与措置(EFF)、期間37カ月間〕のうち、第2弾となる7億6,000万SDR(約10億ドル、注)の融資の実施を承認した。IMFは2月から3月中旬にかけて、政府の財政改革や歳入増に向けた対応などを精査し、スタッフレベルで融資継続に合意していた(2025年3月21日記事参照)。また、シャバズ・シャリフ首相が2月中旬にアラブ首長国連邦(UAE)でIMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事と会談した際、政府が経済成長の上昇とインフレ率の低下を両立している点について同専務理事から高い評価があり、IMFの継続的支援に前向きな見通しが示されていた(2025年2月21日記事参照)。
パキスタンは2022年から2024年半ばにかけて、外貨準備高不足と為替相場の下落により一時期インフレ率が前年同月比38%まで上昇したが、緊縮財政で徹底してインフレを抑え込んだ結果、食品価格を中心に物価は安定を見せていた(2025年2月13日記事参照)。今回の融資は、2024年9月に承認されたEFFの一環であり、政府はこれを足がかりに歳入増に向けた財政改革、農業所得税をはじめとした徴税強化などの施策を推し進め、経済回復を図っている(2024年9月30日記事参照)。
また、昨今のインド・パキスタン間の衝突(2025年5月9日記事参照)を背景に、今回の融資決定前の5月8日、インドのビクラム・ミスリ外務次官からは「IMFのパキスタン向け融資を憂慮する」という発言があり、横やりを入れるかたちとなっていた(2025年5月9日付ニューインディアンエキスプレス)。
(注)Special Drawing Rightの略で、特別引出権。通貨ではないものの、その価値は米国ドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。
(糸長真知)
(パキスタン)
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