第1四半期のGDP成長率は前年同期比3.1%、2025年通年の見通しも2~3%に据え置き

(香港)

香港発

2025年05月23日

香港特別行政区(以下、香港)政府は5月16日、2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率の確定値を前年同期比3.1%と発表した。同月2日に発表した速報値から修正はなく(2025年5月9日記事参照)、2月26日に発表した2025年通年の実質GDP成長率見通し(2~3%)も据え置いた(2025年3月3日記事参照)。

香港政府経済顧問代理の林幗瑛(セシリア・ラム)氏は、2025年の香港経済の見通しについて、「足元では国際的な貿易摩擦が幾分和らいだため、外部環境における逆風や不確実性は若干緩和され、世界経済の見通しに対する下方圧力の一部緩和につながる可能性がある。また、中国本土の経済が、より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策のもとで安定した成長を持続することにより、香港を含むアジアの輸出にもプラスに働くだろう」とした。一方で、米国の貿易政策の不確実性が残る中で、今後の金融政策の動向は複雑であるとの見解を述べた。また、内需に関しては「雇用者の所得増加や、香港政府が推進するメガイベントおよび観光促進政策が消費マインドを押し上げる一方、来港客と香港居住者の消費パターンの変化(注)が引き続き課題となるだろう」との見方を示した。

香港大手商業銀行の大新金融集団のチーフエコノミスト兼ストラテジストの温嘉煒氏は、輸出の好調要因について、「米中貿易摩擦を背景とした前倒し輸出や、香港株式市場の活況による金融サービス輸出の拡大が寄与した」と分析する一方、「個人消費の減速が続き、香港居住者の消費意欲は依然として低調」と指摘した(「香港経済日報」5月16日)。

(注)中国本土からの来港者の消費パターンは、ショッピングなどのモノ消費から、街歩きやハイキングなどのコト消費に変化しつつあり、宿泊地も香港より安く近接した深セン市に変わりつつある。また、香港居住者は買い物目的で中国本土を訪れて消費する「北上消費」が増えている。

〔黄莃倫(ケリー・ウォン)〕

(香港)

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