第1四半期の貿易額は過去最高、輸出の通年予測は下方修正
(マレーシア)
クアラルンプール発
2025年05月07日
マレーシア統計局は4月28日、2025年第1四半期(1~3月)の貿易総額が前年同期比3.6%増の7,157億リンギ(約23兆6,181億円、1リンギ=約33円)だったと発表した(添付資料表1参照)。第1四半期として過去最高を記録した。輸出額は3,784億リンギ、輸入額は3,374億リンギで、それぞれ4.4%、2.8%増加した。また、貿易収支は20.1%増の410億リンギで、黒字を維持した。
輸出を品目別にみると、電気・電子製品は前年同期比19.7%増の1,601億リンギで、全体の4割以上を占めた(添付資料表2参照)。うち、同品目の半分を占める集積回路は27.8%増の867億リンギだった。次いで、パーム油・同製品は14.4%増の285億リンギだった。一方、精製石油製品、液化天然ガス(LNG)、専門・科学・制御機器および装置は、前年同期を割り込んだ。
輸入では、全体の36.9%を占める電気・電子製品が24.5%増の1,245億リンギだった。上位品目の中では、特定産業・部品用の機械・装置と、航空機関連機器・部品も拡大した。2025年1月の米国からの航空機(HS880240)輸入が、前年同月比で倍増した。加えて、その後3月にマレーシア航空は、機体近代化の一環として、ナローボディ航空機30機を米ボーイングから取得したと発表した。一方、精製石油製品は38.2%減の232億リンギ、原油は12.2%減の135億リンギだった。
国・地域別にみると、輸出では、シンガポールが前年同期比15.2%増の604億リンギで、引き続き最大の輸出相手国だった(添付資料表3参照)。次いで米国、中国、香港、日本が続いた。マレーシア投資貿易産業省(MITI)は、対米輸出の高い伸び(36.5%増)は主に電気・電子製品、機械・設備および部品、また、ゴム製品への需要増によるものとした。こうした現象は米国が相互関税発表前の駆け込みによるもので、90日間の猶予期間中に輸出はさらに拡大する可能性がある、とマレーシアの大手証券会社CIMBセキュリティは分析した。
輸入では、首位の中国は前年同期比11.0%増の752億リンギで、全体の22.3%を占めた。次いでシンガポール、台湾、米国、日本が続いた。
四半期ごとの輸出増減率への寄与度を国・地域別にみると、日本と中国はマイナスが続いたのに対し、米国の輸出増の寄与が引き続き大きかった(添付資料図参照)。
マレーシア工業開発銀行(MIDF)研究所は、2025年の輸出伸び率を2.0%(前年は5.7%)、輸入を4.5%(同13.2%)と予測し、輸出を前回予測(輸出4.9%、輸入4.5%)から下方修正した。貿易摩擦の激化による対外貿易への悪影響や、需要減少による生産縮小が下方修正の背景にある、とMIDFは説明した。その上で、下振れリスクとして、貿易政策の不確実性や物価上昇圧力なども挙げた。他方、あらゆる貿易交渉の進展、中でも相互関税課題への対応に向けたマレーシア代表団の米国政府との協議(2025年4月30日記事参照)により、影響は緩和される可能性があると楽観的な見方も示した。
(戴可炘)
(マレーシア)
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