EU、対ロシア制裁第17弾を採択、制裁回避策「影の船団」向けに大規模追加制裁

(EU、ロシア)

ブリュッセル発

2025年05月22日

EU理事会(閣僚理事会)は5月20日、第17弾となる対ロシア制裁パッケージを採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の制裁パッケージは、ロシアのエネルギー輸出からの収益削減とともに、軍事関連技術へのアクセスのさらなる制限を狙ったものだ。

中心となるのは、EU域内港湾へのアクセスやサービス提供の禁止対象となる「影の船団」に属する船舶(2024年12月18日記事参照)の指定拡大だ。影の船団とは、EUがG7諸国などと実施するロシア産石油製品の上限価格規制(2023年2月9日記事参照)の回避に利用される石油タンカーなどの船舶だ。今回、新たに189隻を追加したことで、制裁対象は342隻となった。また、影の船団の運航に関係する58団体と17個人も、資産凍結や資産提供の禁止などの対象に追加した。これには、ロシア石油大手スルグトネフテガスや石油輸送会社ボルガ・シッピングのほか、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、香港などの海運会社やロシアの石油輸送業向け保険会社なども含まれる。

一方で、サハリン2から日本へ輸出される原油に対する上限価格規制の適用除外措置については、2026年6月28日まで延長した。

軍事関連では、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、アルミニウム粉末、マグネシウム粉末などのミサイル推進剤に利用されるエネルギー物質の前駆体や、規制済みのコンピュータ数値制御装置の予備部品などを輸出規制の対象に追加した。また、ロシア企業18社のほか、トルコ、ベトナム、UAEの企業など合計31団体をより厳格な二重用途物品の輸出規制対象に加えたほか、ドローン、武器、弾薬などをロシア軍に供給する45以上の団体および個人も制裁対象に追加した。

このほか、ロシアが主導するスパイ活動や海底ケーブルの破壊工作に関与した漁業会社などEUの不安定化に向け活動を行う6団体および21個人と、深刻な人権侵害や民主主義の抑圧に加担した司法関係者など28個人についても、資産凍結と資産提供の禁止などの制裁対象に追加した。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア)

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