上海市高級人民法院、上海法院知的財産権司法保護白書を発表

(中国)

上海発

2025年05月09日

中国の上海市高級人民法院は4月23日の記者会見で、「上海法院知的財産権審判白書(2024年)」を発表した。

白書によると、2024年に上海市の裁判所が受理した知的財産権に関する案件数は4万7,388件(前年比28.3%減)、結審件数は5万2,061件(前年比11.8%減)だった。また、2024年末には同裁判所が扱った知的財産権関連の案件のうち54件が最高人民法院管轄の人民法院案例データベースに掲載され、案件掲載数は国内でトップクラスとなった。

同裁判所は、2024年の年間を通じて重要技術分野のイノベーション成果の司法保護に力を入れ、特許や技術保護、ソフトウエアの著作権など、技術分野の侵害訴訟案件5,272件、人工知能(AI)技術、ライブコマースなどのデジタル経済関連訴訟案件2,310件を結審した。

そのほか、同裁判所は懲罰的損害賠償制度(注)を実施し、2024年の知的財産権侵害者による権利者への損害賠償総額は前年同期比2.73倍の22億4,000万元(約448億円、1元=約20円)と増加したが、そのうち同制度を適応した懲罰的賠償総額は1億1,000万元(前年比2.32倍)と大幅に増加した。同裁判所は知的財産権を厳格に保護する確固たる立場と決意を表明した。

記者会見では「十大知的財産案件」「新品質生産力における典型的な知的財産案件」についても発表した。十大知的財産案件には商標、著作権、不正競争、営業秘密、知的財産権契約、悪意ある知的財産訴訟などが含まれた。新品質生産力の典型的な知的財産案件には、原子力・蒸気発電設備、ソフトウエアの互換性、医療機械機器の研究開発、ディープフェイクなど多くの最先端技術分野が挙げられた。

また、知的財産権訴訟の審理期間が長期という課題に対しては、上海知識産権裁判所が世界知的所有権機関(WIPO)仲裁・調停上海センターとの協力関係を構築するほか、上海市知識産権保護センターと連携することで、解決に向けた動きがあった。その結果、2024年の1つの案件での平均審理時間は169.32日と、2023年の211.6日から大幅に短縮され、快速審理審査チームの平均審理期間は40日程度まで圧縮された。

(注)懲罰的損害賠償とは、加害者の行為が強い非難に値すると認められる場合に、加害者に制裁を加える目的で、被害者が実際に受けた損害を上回る金額の支払いを命じる賠償を指す。

(許蓓莉)

(中国)

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