金鉱開発、サヘル地域の不安定化でコートジボワールへの投資シフト加速

(コートジボワール、マリ、ブルキナファソ、ギニア、セネガル)

アビジャン発

2025年05月14日

近年、西アフリカ一帯の金探鉱開発が進展する中、コートジボワールは最も成果を上げた国の1つとして注目されている。同国の金生産量は2012年の10トンから、2024年に55トン、2025年には65トンに増加すると予測され、2023年現在、西アフリカで第5位の金産出国となっている。ママドゥ・サンガフォワ・クリバリ鉱山・石油・エネルギー相は、今後5年間で生産量100トンを目指すとしている(5月2日エコフィン・エージェンシー報道)。

一方、西アフリカ地域のサヘル地帯に位置するマリとブルキナファソはそれぞれ、同地域でガーナに次ぐ第2位と3位の金産出国だが、近年のイスラム過激派による攻撃やクーデター後の政情不安、軍事政権下での政策変更などに起因して、企業の投資意欲が冷え込んでいる。特に欧米の金鉱山開発会社が相次いで撤退し、コートジボワールへの投資シフトを加速させている。

オーストラリアのリゾリュート・マイニングは2024年、マリ軍事政権との税務紛争により、最高経営責任者(CEO)を含む従業員が政府に拘束され、1億6,000万ドルの支払いを余儀なくされた(2024年11月18日ロイター報道)。同社は2025年5月1日、供給源を多角化していくとし、コートジボワール北東部のドロポ金鉱山と北西部のABCプロジェクトをアングロゴールド・アシャンティから1億5,000万ドルで買収することを発表した。同社は近年、複数の大型金鉱山の生産が開始されたコートジボワールの安定的な鉱山事業環境を評価している(5月1日ロンドン証券取引所報道)。

また、西アフリカ一帯で金鉱山の生産、開発、探鉱を手掛ける英国のエンデバー・マイニングは2023年6月、ブルキナファソに所有する4カ所の金鉱山のうち2カ所を売却した。これにより、同社のコートジボワールでの生産量は2024年にブルキファソを上回った。5月5日のロイター報道によると、カナダのフォーチュナ・マイニングは4月、ブルキナファソでの治安や事業環境の悪化を前に、所有する全ての金鉱山の売却を発表し、今後はギニアやセネガル、コートジボワールに注力するとの見解を示した。

ワールド・ゴールド・カウンシルによると、2023年のアフリカ金産出国の生産量は、ガーナ(135.1トン)、マリ(105.0トン)、南アフリカ共和国(104.3トン)、ブルキナファソ(98.6トン)、スーダン(72.5トン)、ギニア(64.9トン)、タンザニア(52.0トン)、コートジボワール(51.5トン)、ジンバブエ(46.6トン)、コンゴ民主共和国(45.4トン)、ニジェール(33.4トン)、モーリタニア(21.8トン)、リベリア(19.9トン)、セネガル(17.1トン)、マダガスカル(15.9トン)となっている。

(渡辺久美子、橘欣子)

(コートジボワール、マリ、ブルキナファソ、ギニア、セネガル)

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