テマセク基金の環境技術公募、断熱材開発の地場スタートアップが優勝

(シンガポール)

シンガポール発

2025年05月12日

シンガポールの非営利団体テマセク基金が主催する環境技術公募「ザ・リバビリティー・チャレンジ2025」の最終ピッチコンテストが57日、開催された。気候変動への対応部門で、エアロゲル断熱材を開発するシンガポールのスタートアップ、クロスリンカー(Krosslinker外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が優勝した。また、二酸化炭素(CO2)の排出削減部門では、水素貯蔵・輸送技術を開発するカナダのスタートアップのエルトン・エナジー(Ayrton Energy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が優勝した。両社はそれぞれ、優勝賞金として100万シンガポール・ドル(約11,200万円、Sドル、1Sドル=約112円)を獲得した。

テマセク基金は2018年から同技術公募を実施しており、今回で8回目となる(2024年12月16日参照)。今回の実施では、(1CO2排出削減と、(2)地球温暖化を中心とした気候変動への対応の2部門に対し、100カ国・地域以上から1,200社以上が応募した。気候変動への対応部門で優勝したクロスリンカーが開発した、エアロゲルの断熱素材「キントエアロ(QuintAero)」は、建設用塗料や燃料電池の断熱コーティング素材として用いることができる。同素材を用いることで室内の温度を下げ、エアコンなど電力料金を大幅に引き下げる効果があるという。熱帯気候のシンガポールで建設塗料として用いた場合には室内温度を1015度下げる効果があると見込んでおり、今後予定している実証実験で検証する予定だ。

写真 気候変動部門で優勝し、記念撮影に応じるクロスリンカーのガイアトリ・ナタラジャン共同創業者兼CEO(中央)とマヘシュ・サチタナダム共同創業者兼ディレクター(右)(ジェトロ撮影)

気候変動部門で優勝し、記念撮影に応じるクロスリンカーのガイアトリ・ナタラジャン共同創業者兼CEO(中央)とマヘシュ・サチタナダム共同創業者兼ディレクター(右)(ジェトロ撮影)

また、CO2排出削減部門で優勝したエルトン・エナジーが開発した水素の貯蔵・輸送技術「液体有機水素キャリア(LOHC、注)」は、これまでのLOHCと比べると、輸送時の温度を大幅に引き下げることが可能だという。この結果、輸送・貯蔵コストを大幅に削減できる効果があるとしている。同社は、優勝賞金を用いた水素の海上輸送の実証実験に向け、シンガポールの地場海運会社イースタン・パシフィック・シッピング(EPS)や建設会社などと話し合いを進めている。

(注)LOHCは、液体有機化合物を水素と結合して、水素化有機化合物として貯蔵、輸送する技術。従来の水素の輸送技術と比べると取り扱いやすく、安全性が高いとされる。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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