日タイ「第1回エネルギー・産業対話」を実施、マルチパスウェイ推進などで一致

(タイ、日本)

バンコク発

2025年05月08日

日本とタイ両政府は429日、産業競争力向上などについて閣僚級で議論する「エネルギー・産業対話(EID立ち上げ、第1回対話をバンコクで実施外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、サイドイベントとして「日タイ自動車産業を担う次世代人材輩出に向けたラウンドテーブル」を開催し、自動車関連企業などが参加した。

日本から武藤容治経済産業相、タイからピチャイ・チュンハバジラ副首相兼財務相、エーカナット・プロムパン工業相らが出席した。

EID実施後に出された共同声明(英原文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)和文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))によると、両国政府は、次世代エネルギー転換と低炭素社会における産業競争力強化を目的に本対話を設置。自動車産業をはじめとする製造業の生産・輸出競争力の強化に向けて議論を行い、(1)マルチパスウェイ、(2)サーキュラーエコノミー(循環経済)、(3)競争力あるサプライチェーンと人材の健全な維持・発展について、協力して政策を推進していくことで一致した。高い現地調達率を通じた次世代自動車の生産・輸出基盤の実現、内燃機関車(ICE)を含むサプライチェーンの脱炭素化、持続可能な燃料(水素、合成燃料、バイオ燃料など)の使用を促すことなどに合意。サーキュラーエコノミーに関しては、自動車のリサイクル、デジタル技術による脱炭素化や生産性向上に取り組むことを確認した。EIDでの議論は今後、事務レベルでのフォローアップしつつ、その成果を1年後の第2EIDで報告することとされている。

自動車関連企業などとのラウンドテーブルを併催

産官学が参加したラウンドテーブルでは、自動車産業を担う次世代人材の輩出に向けた戦略、日タイ高度産業人材の輩出に向けた産官学連携などをテーマに議論が行われた。ピチャイ副首相は、「技術的変化が起こる中、人材教育が重要な課題」「日本式の経営技術を生かし、共に競争力を高め、産業をリードしたい」と発言。エーカナット工業相は、「日タイ連携の賜物であるピックアップトラックとエコカーは数十億バーツ相当の輸出を生んでいる」「環境や社会責任などに配慮した需要に合う新製品の開発に向けて、人材面を含めて連携していきたい」とコメントした。

写真 ピチャイ副首相(ジェトロ撮影)

ピチャイ副首相(ジェトロ撮影)

写真 エーカナット工業相(ジェトロ撮影)

エーカナット工業相(ジェトロ撮影)

武藤経産相は、60年以上にわたる日タイ間の自動車産業における連携に触れ、経済産業省としてタイで7万人以上の産業人材の育成に貢献してきたと強調。今後も電動化や燃料の脱炭素化、ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)など、次世代自動車産業の担い手の輩出に共に取り組む意向を示した。

写真 武藤経産相(ジェトロ撮影)

武藤経産相(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションでは、複数の現地日系企業から脱炭素化に取り組むための人材育成の取り組みが紹介された。また、電動化やデジタル化などに伴い、従来と異なる技能を有する人材を製造業で輩出していく上での課題や求められる取り組み、政府支援、産官学連携の可能性などについて、議論が行われた。

写真 ラウンドテーブル出席者の様子(ジェトロ撮影)

ラウンドテーブル出席者の様子(ジェトロ撮影)

なお、今回のEIDに際して、日タイ企業・団体間で9件の協力覚書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が交わされ、脱炭素化や技術人材交流などの個別の取り組みが発表された。

(藪恭兵、宮越朗)

(タイ、日本)

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