米マクドナルドの第1四半期決算は既存店売上高が大幅減少、経済的圧力が中間所得層にも波及
(米国)
ニューヨーク発
2025年05月07日
米国マクドナルドは5月1日、2025年第1四半期(1~3月)決算を発表した。世界の既存店売上高は前年同期比1.0%減少となった。米国での既存店舗売上高は3.6%減で、新型コロナウイルスのパンデミック全盛期の2020年第2四半期(8.7%)以来の減少率となった。
同社のイアン・ボーデン最高財務責任者(CFO)は、インフレや高金利、そのほかの経済的圧力が低所得者層に重くのしかかっており、「それが今、中間所得層の消費者にも波及している」と指摘した。また、クリス・ケンプジンスキー最高経営責任者(CEO)は同社の電話会議で、「米国では、QSR(注)業界全体における低所得の消費者層の来店客数が前年同期比でほぼ2桁減少した。数カ月前とは異なり、中間層の消費者の来店客数もほぼ同程度減少しており、経済的圧力を受ける客層が拡大したことを明確に示している」と述べた。
同社が2024年に売り上げ不振に陥った際には、インフレ疲れの顧客を呼び戻す対策として、消費者の手の届きやすい低価格帯メニューを導入し、セットメニューを打ち出した。その後、改善の兆しが見え始めたものの、大腸菌感染症の発生により客足が再び遠のいていた。ボーデン氏は、予算が限られた主要顧客層にアピールするため、2025年の残りの期間も5ドルセットなどの低価格戦略に注力すると述べた。
トランプ政権の関税政策や景気後退に対する懸念が高まる中、複数の大手消費関連企業の決算発表では、消費需要の低迷と今後の業績悪化を指摘する声が目立っている。直近では、食品・飲料大手ペプシコが4月24日に発表した2025年第1四半期(1~3月)の決算で、インフレや世界貿易戦争による関税関連のサプライチェーンコストと消費者マインドの低下を理由に、業績見通しを下方修正した。同社によると、ポテトチップスなどのスナック菓子への需要が減少傾向にある。また、同社は米国向け飲料の製造をアイルランド産の炭酸飲料濃縮液に依存しており、消費者マインドの低下に加えて、関税負担の増加にも直面し、2025年の利益増加はもはや見込めないと述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版4月24日)。
また、日用品大手の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、貿易戦争による投入コストへの影響を相殺するため、一部の商品を値上げすると発表した。さらに、景気の先行き不透明感から消費者が支出を控える中、通期の業績見通しを下方修正した。同社のアンドレ・シュルテンCFOは、「関税の影響をコスト構造の中で軽減するために、あらゆる手段を講じなければならない」と述べた。中国からの原材料調達の変更は選択肢の少なさから、短期的には複雑かつ困難であるため、価格改定とコスト削減が主な手段になると説明した。同氏によると、中国が輸入に占める割合は10%強だが、145%の関税がかかるため、その影響は大きく、年間で10億~15億ドルの追加コストを負担することになると見込む(ロイター4月24日)。
(注)クイックサービスレストランを指す。一般的には、カウンターやドライブスルーで注文を受け取り、スピーディーで効率的なフードサービスを提供する。
(樫葉さくら)
(米国)
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