ムーディーズがカンボジアの格付け見通しを引き下げ、米国関税措置の影響

(カンボジア)

プノンペン発

2025年05月08日

米国格付け大手のムーディーズは4月28日、カンボジアの格付け見通しをこれまでの「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたと発表した。長期国債の格付けは「B2」のままとしている。

格付け見通しは、2024年5月に「ネガティブ」から「安定的」に引き上げられたが、約1年後に再び「ネガティブ」に戻ったかたちだ。ムーディーズの分析によると、カンボジアはこれまで貿易赤字を外国からの直接投資(GDPの約10%に相当)で賄うことにより、経常収支の黒字を維持してきた。しかし、米国の関税政策により、基幹産業である縫製業関連品(衣料品、靴、旅行用かばんなど)の輸出減少と、世界景気の下振れ懸念による投資意欲減退リスクにより、この構造が維持できなくなり、対外的な脆弱(ぜいじゃく)性が増す可能性があるとした。カンボジア関税消費税総局の統計によると、米国はカンボジアにとって最大の輸出国で、2024年の米国向け輸出は輸出総額の37.9%を占めている。そのため、米国政府が2025年4月2日に発表したカンボジアへの相互関税(ASEAN最大の49%)は、政府および民間セクターの輸出部門に大きな衝撃を与えた。

カンボジア政府は米国からの一部輸入品の関税引き下げを即座に提案しており、現在、副首相および商業相をトップとする特別ワーキンググループが、米国政府筋との交渉準備などを進めている。5月2日の政府プレスリリースによると、米国通商代表部(USTR)との対面交渉がワシントンで5月14日と15日に予定されており、この交渉の行方が注目される。

4月22日のIMFの発表によると、2025年と2026年の実質GDP成長率はそれぞれ、従来予想(2025年1月)の5.8%から4.0%に、6.2%から3.4%に下方修正された。このGDP成長率予測も、米国の関税政策よる下振れリスクが反映されたものだ。

(大西俊也)

(カンボジア)

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