インドとパキスタンが軍事衝突

(インド、パキスタン)

ニューデリー発

2025年05月09日

インド国防省は5月7日、同国がパキスタンに対する軍事攻撃を5月6日夜から7日未明にかけて行ったと発表した。係争地カシミール地方のインドが実効支配する地域(ジャンム・カシミール、ラダック)内で4月22日に発生したテロ事件をきっかけとして、措置の応酬が続くなど、両国の緊張が高まっていた(2025年5月8日記事参照)。

7日のインド国防省の発表によると、「シンドール(注)作戦」と名付けられた同攻撃は、4月22日のテロに関わったと疑われるテロリストの拠点9カ所を対象としたもので、パキスタン政府の軍事施設は標的とされていない。ラージナート・シン国防相は「インドは自国領土への攻撃に対して『反撃する権利(Right to Respond)』を行使した。計画どおりテロリストの拠点が破壊され、民間人は被害を受けなかった」と発言した。

これに対し、パキスタン政府は、インドの行為はパキスタンの主権侵害に当たり、国際法上の戦争行為として強く非難している。また、攻撃対象には民間施設も含まれており、女性や子どもを含む26人の犠牲者が出ていると発表した。

また、8日のインド国防省の発表によると、7日夜から8日未明にかけて、パキスタン軍がドローンやミサイルを使ってインド北西部の複数の軍事施設を狙った攻撃を行った。これに対して、インド軍はパキスタンの防空レーダーなどを標的として「同じ程度」の攻撃を行ったとした。併せて「パキスタン軍が自重しさえすれば、インド軍としてエスカレートさせる意図はない」とあらためて強調した。

インドでは7日に全土の特定地区で民間防衛訓練(Civil Defence Drill)が実施され、緊急時の対応確認が行われた。また、パキスタン国境に近い北西部に位置する27の空港が10日まで閉鎖されており、400以上の便が欠航するなど経済的な影響も出ている。在インド日本大使館は在インドの邦人に向けて、不要不急の外出を避け、情報を注視するよう注意喚起している。

(注)シンドールは、ヒンドゥー教徒の既婚女性が髪の分け目につける赤色の粉を指す。テロ事件では、ヒンドゥー教徒の男性が主な標的となり、犠牲となった男性に寄り添う妻の姿が大きく取り上げられ、インド全体に悲しみや怒りが広がった。作戦名には、こういった国民の感情が込められているものとみられる。

(丸山春花)

(インド、パキスタン)

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