欧州委、EV対応や安全性強化に向けた車検規制の改正案を発表
(EU)
ブリュッセル発
2025年05月07日
欧州委員会は4月24日、定期技術検査(PTI)と呼ばれる車検や車両登録に関するEU法を包括的に見直す改正パッケージを発表した(プレスリリース)。改正案は、新技術への対応、安全性の向上、大気汚染の軽減などを目的とした車検制度の強化と関連書類のデジタル化をEUレベルで推進するためのものだ。改正パッケージには、PTI指令、車両登録書類指令、商用車街頭検査指令の改正案が含まれる。いずれの法案も今後、EU理事会(閣僚理事会)および欧州議会で審議される。改正案の主な内容は次のとおり。
- 車検の新技術への対応:PTIを電気自動車(EV)に対応させるとともに、先進運転支援システム(安全性に関するソフトウエアや排出関連システムを含む)に関する検査項目を追加する。
- 新たな排出ガス検査の導入:超微粒子や窒素酸化物(NOx)の先進的な測定方法を使用し、不正改造車などを含む高排出ガス車の検知を強化する。ディーゼル車など一部車両で求められる検査方法を、現行の排出ガスの不透明度を測定する検査から粒子数を測定する検査に変更する。
- 走行距離の改ざん対策強化:現行指令ではPTIの際に走行距離を記録することが義務付けられているが、PTIの頻度は多くても年1回、新車の場合は初回のPTIは多くの場合登録から4年後となるため、改ざん対策としては不十分だ。そこで改正案は、加盟国に走行距離に関するデータベースの設置を求めた上で、修理などの際にも走行距離を記録することを義務付ける。
- 年次検査の義務化:新車登録から10年以上経過した乗用車および小型商用車(バン)について、多くの加盟国で年次PTIの実施が義務付けられているが、義務付けされていない加盟国もある。そこで、改正案では年次PTIの実施を全加盟国一律で義務付ける。
- 自動二輪車(オートバイ)向け車検の厳格化:エンジン排気量が125立方センチメートル超のオートバイについて、現行指令においてもPTIが求められるが、実施にあたっては適用範囲や頻度など加盟国による裁量が大きい。そこで改正案は、こうした裁量を廃止し、当該排気量超のオートバイに対するPTIを全加盟国一律で義務付ける。
- 書類のデジタル化:電子車両登録や電子車検証を発行するともに、加盟国間での情報伝達の円滑化を図る。
(吉沼啓介)
(EU)
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