2025年の世界経済成長率は2.4%、関税ショックで前回から下方修正、国連見通し

(世界)

調査部国際経済課

2025年05月20日

国連経済社会局(UN DESA)は5月15日、「世界経済状況・予測」の2025年中間報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2025年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を2.4%と予測し、前回見通し(2025年1月発表)から0.4ポイント下方修正した(添付資料表参照)。下方修正の背景として、米国の一連の関税引き上げと、それに対する中国、EU、カナダによる報復措置に加え、一部の国に対する追加関税適用の一時停止、2国間交渉がもたらす不確実性を指摘している。

国・地域別にみると、米国(1.6%)は前回見通しを0.3ポイント下方修正した。関税率の上昇と政策の不確実性が民間投資と消費の足かせになると予想した。EU(1.0%)は0.3ポイント減となり、底堅い労働市場や実質所得の伸び、金利低下に支えられた個人消費の伸びは貿易障壁に伴う輸出減少で相殺されるとした。中国(4.6%)は前回発表から0.2ポイント下方修正となり、輸出型製造業の混乱や消費の低迷、低調な不動産セクターが中国経済の減速につながるとした。インド(6.3%)は前回見通しから0.3ポイント下方修正したものの、依然として主要経済圏で最も急速な成長を続けていると指摘した。

UN DESA経済社会問題担当総局長の李俊華氏は「関税ショックは、脆弱(ぜいじゃく)な途上国を直撃し、成長を鈍化、輸出収入を減少させ、債務問題を深刻化させるリスクがある。これらの経済圏は既に長期的で持続可能な開発に必要な投資を行うのに苦労している」とコメントした。激化する貿易摩擦は多国間貿易システムを緊張させ、小規模で脆弱な経済圏は、断片化された世界情勢の中でますます疎外される。こうした課題に対処するために、ルールに基づく貿易システムを活性化し、多国間協力の強化が不可欠とした。

なお、世界のヘッドラインインフレ率については、2024年の4.0%から2025年には3.6%まで減速するものの、多くの経済圏で物価上昇圧力は依然として高止まりしている。貿易障壁の高まりによるショックはインフレリスクを増幅させていると指摘した。また、世界の貿易総額の成長率は、2024年の3.3%から2025年に1.6%に減速するとした。

今回の予測は、2025年5月初旬時点の情勢と、政策発表(注)を織り込んだシナリオを前提としている。UN DESAは、大幅な関税引き下げを伴う貿易摩擦が早期解決した場合、世界経済見通しが改善する可能性があるとするものの、下振れリスクに傾いているとした。主なリスク要因としては、政策の不確実性の長期化、貿易摩擦の継続、市場のボラティリティーの継続により、サプライチェーンがさらに混乱し、企業や消費者の信頼が損なわれ、政府の財政余力が制限される可能性などを挙げた。下振れ時のシナリオでは、2025年の世界の成長率は0.3ポイント押し下げられるとした。

(注)UN DESAは、報告書のベースラインシナリオに織り込んだ米国とその他の国・地域の主な政策発表について、米国シンクタンクのピーターソン国際経済研究所(PIIE)の公表データ(2025年4月29日時点)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照している。同公表データによると、5月12日発表(2025年5月13日記事参照)の中国と米国の115%関税引き下げに関する合意については、含まれていない。

(馬場安里紗)

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