地経学タスクフォースを設置検討、ASEAN高級経済実務者会合
(タイ、ASEAN)
バンコク発
2025年05月19日
タイ商務省・貿易交渉局(DTN)は5月6日、ASEAN高級経済実務者会合(SEOM)が4月21~24日にマレーシアのペナンで開催されたことを公表した。5月末に開催予定のASEAN首脳会議(サミット)を見据え、経済課題に関する議論を交わした。
今回のSEOMでは、2025年前半の経済の優先課題に関する取り組み状況を議論した。ASEAN物品貿易協定(ATIGA)とASEAN・中国・自由貿易協定(ACFTA)の改定作業を加速し、同年内の署名を目指すほか、ASEAN・インドFTA(AIFTA)の見直し、ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)について、2025年中の交渉妥結を目指す方針を確認した。これらの方針は5月のASEAN首脳会議でも確認される予定だ。また、現行のASEAN経済共同体(AEC)ブループリント2025に置き換わる「AEC戦略計画 2026-2030」の策定作業についても、進捗の確認を行った。
DTNによると、ASEANは主要な対話パートナー国・地域の中国やEU、香港、日本、韓国、米国などとの協議に向けた準備を進めている。協議を通じて、ASEANのデジタル経済、循環経済などに関する作業計画を共同で実施していくという。
SEOMでは、地経学的な対立がもたらす新たな課題への対策も議論した。ASEANは、公正かつ透明な多国間貿易制度や、特定の立場によらない非同盟政策、相互的でバランスのとれた利益を有する領域での協力姿勢に基づき、共同の取り組みを模索する。ASEANは現在、地経学的課題に対応するための「ASEAN地経学タスクフォース」の設立に向け、準備を急いでいるという。
なお、5月にASEAN首脳会議で発表予定の「ASEAN・湾岸協力会議(GCC)間の経済協力に関する共同声明」についても、準備が進められている。共同声明の下、農業や食料安全保障、観光、デジタル経済、金融技術(特にイスラム金融)分野での緊密な経済パートナーシップを強化し、将来的なFTA締結に向けた実現可能性調査(FS)などが盛り込まれる予定。
(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ、ASEAN)
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