トランプ米政権、原子力産業の活性化に向け、原子炉試験や原子力規制委員会の改革の大統領令発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月28日

米国のトランプ政権は5月23日、原子力産業の活性化に向け、4本の大統領令(注)に署名した(2025年5月28日記事参照)。

このうち、エネルギー省(DOE)における原子炉試験の改革に関する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、DOEによる小型モジュール炉(SMR)などの試験プロセスを改革することとしている。具体的には、(1)国立研究所での試験プロセスに関し、DOEが定めた基準を満たし、技術開発と財政的支援の観点から、申請書が提出された日から2年以内に実用化が可能なことを証明するのに十分な先進的原子炉(適格原子炉)について、審査プロセスを迅速化する仕組みを整備する(適格原子炉に関するガイダンスの策定、審査体制の整備など)、(2)国立研究所外でも新たに3基の原子炉をパイロットプログラムとして承認(2026年7月4日までの臨界達成が目標)する、(3)これらの試験炉の設置などに際して必要となる環境影響評価について、国家環境政策法(NEPA)上の例外措置を講じることなどを盛り込んでいる。

また、原子力規制委員会(NRC)の改革を命じる大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、NRCが「1978年以降、新規の原子炉を認可することを怠ってきた」「リスク回避に伴う深刻な国内および地政学的コストを適切に考慮することなく、微小なリスクのために米国人を原子力から隔離しようとしてきた」と批判した上で、2050年までに2024年の発電容量の4倍となる400ギガワット(GW)の原子力発電の導入促進などを目指すべく、NRCに対して複数の改革を指示している。具体的には、(1)今後の原子炉の認可に際して、安全・健康・環境への配慮に加えて、原子力の利用可能性の向上と原子力の革新が経済と国家安全保障にもたらす利益についても考慮するよう改める、(2)新型原子炉へのライセンス供与などの一部を除き、NRCの人員を削減する、(3)原子力規制関連の各種ガイダンスの見直し(各種申請に対する審査期限の設定や放射線被爆に関する閾値の見直し)を実施し、9カ月以内に規則案を、18カ月以内に最終規則を発行することなどを求めている。

(注)4本の大統領令は、「原子力基盤の活性化を図る大統領令」「DOEにおける原子炉試験の改革を図る大統領令」「原子力規制委員会の改革を命じる大統領令」「国家安全保障のための先進原子炉の導入を図る大統領令」。

(加藤翔一)

(米国)

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