トクヤマ、先端半導体用シリコンウエハー原料工場をベトナムに
(ベトナム)
ホーチミン発
2025年05月14日
トクヤマベトナム(注1)は4月29日、ベトナム南部バリア・ブンタウ省のフーミー3特別工業団地の工場建設予定地で地鎮祭を開催した。工場完成は2026年3月、商業運転開始は2027年前半を予定している。地鎮祭には、グエン・バン・トー同省人民委員長をはじめ、在ホーチミン日本総領事館の小野益央総領事、同社日本本社の横田浩代表取締役社長執行役員らが出席した。
総合化学メーカー・トクヤマ(山口県周南市)は、先端半導体用シリコンウエハーの原料となる高純度多結晶シリコン(注2)の破砕および洗浄工程の工場をベトナムに新設することで、生産拠点を2拠点化(現在は山口県の1拠点)する。サプライチェーンを強靭(きょうじん)化し、半導体の安定供給を実現するほか、ベトナムのシリコン関連産業の形成、人材の雇用・育成に寄与することを目的としている(注3)。破砕および洗浄を行う半製品(ポリシリコンロッド)は日本のほか、2026年度に稼働を予定しているマレーシアの製造工場から輸入する。完成品は主に日本へ輸出され、シリコンウエハーメーカー(注4)へ納入される予定。
冒頭あいさつでトー委員長は「半導体向け原料製造は、バリア・ブンタウ省内で初めてのプロジェクトであり、省内の高度人材の育成をはじめ、持続可能な地域経済の発展への貢献を期待している」と述べた。
地鎮祭前日の4月28日には、在ベトナム日本大使館とジェトロ、ベトナム国家イノベーションセンター(NIC)などが「ハイテク・GX・半導体分野における高付加価値産業創出に向けた日越協力フォーラム」をハノイ市で開催(2025年5月1日記事参照)。石破茂首相やファム・ミン・チン首相をはじめ、両国の官民関係者250人以上が参加し、トクヤマベトナムを含む、ベトナムで産業の高付加価値化に取り組む日系企業5社が登壇した。同社からは社長の川口一博氏が登壇し、同社の事業や産業の高付加価値化への取り組みを紹介した。
石破首相は結びのあいさつで、ベトナムが国家戦略として掲げる半導体分野の人材育成への協力のほか、産業高度化に向けた半導体サプライチェーンに不可欠な多結晶シリコンの工場建設を支援すると述べた。
地鎮祭でのくわ入れの様子(ジェトロ撮影)
(注1)トクヤマベトナムは、総合化学メーカー・トクヤマが100%出資するベトナム子会社。半導体用多結晶シリコンのベトナムにおける製造販売を行う。2024年8月設立。
(注2)多結晶シリコンは、ケイ石に含まれるケイ素を取り出して作られた金属シリコンを精製し、高純度のケイ素の塊にしたものを指す。先端半導体デバイスは、回路線幅がナノメートル単位まで微細化され、1つの半導体チップに数多くのトランジスタが集積されており、わずかな不純物の存在が電気的特性の制御を困難にする原因となる。そのため、99.999999999%(イレブンナインと呼ばれる)の高純度の多結晶シリコンが求められる。
(注3)このプロジェクトは、ジェトロが事務局を担う経済産業省「グローバルサウス未来志向型共創等事業」の採択案件。
(注4)シリコンウエハーメーカーは、多結晶シリコンを原料として単結晶シリコンのインゴットを製造し、研磨・加工を経てシリコンウエハーを完成させ、国内外の半導体デバイスメーカーへ供給している。
(安部暢人)
(ベトナム)
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