IMF理事会、パキスタンに気候変動対応のため14億ドル規模の支援決定

(パキスタン)

調査部アジア大洋州課

2025年05月14日

IMF理事会は5月9日、パキスタン政府が要望していたIMFの「強靭(きょうじん)性・持続可能性ファシリティー(Resilience and Sustainability Facility:RSF)」下で10億SDR(約14億ドル、注)の支援を承認したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同日には、2024年9月に決定された金融支援パッケージ〔拡大信用供与(EFF)プログラム、期間37カ月〕の第1回審査が承認され、7億6,000万SDR(約10億ドル)がパキスタンに即時支払われたことも発表されている(2025年5月13日記事参照)。

RSFとは、将来的な国際収支の安定性への脅威となり得る気候変動関連リスク軽減のための改革を実施する国に対して、低コストで提供される長期融資だ。今回承認されたプログラムでは、次を目指すこととされている。

  1. 自然災害に対するレジリエンス醸成を最優先事項として、政府全体の公共投資の強化
  2. 価格設定の改善を含めた水資源のより効率的な活用
  3. 自然災害対策、関連資金での中央政府と州政府間の連携強化
  4. 銀行や民間企業の自然災害関連リスクに関する情報アーキテクチャー改造
  5. パキスタン政府の改革推進とマクロ経済リスクに向けた支援

IMFのナイジェル・クラーク副専務理事は「異常気象への脆弱(ぜいじゃく)性低減は、パキスタンのマクロ経済の強靭化と財政状況の安定化につながる。このRSFを通じて、公共投資の強化や水資源利用の効率化など、資金面を含む気候変動への対応力強化を目指す」とコメントした。

(注)Special Drawing Rightの略で、特別引出権。通貨ではないものの、その価値はドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。

(深津佑野)

(パキスタン)

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