米ロサンゼルス市、観光労働者の最低賃金を時給30ドルに引き上げる条例案承認

(米国)

ロサンゼルス発

2025年05月28日

米国のロサンゼルス市議会は5月23日、ホテル(注)と空港従業員の最低賃金を、2028年予定のロサンゼルス・オリンピック・パラリンピック開催までに、時給30ドルに引き上げる条例案を承認した。同案は5月14日に投票が行われ、賛成12票、反対3票で賛成多数となったが、全会一致でなかったため、暫定承認となっていた。23日に再審議が行われ、賛成8、反対3の賛成多数で同条例案は最終承認された。

現在のロサンゼルス市全体の最低賃金は17.28ドルだが、ホテル従業員については20.32ドルが適用されている。今回の条例案を受けて、ホテル・空港従業員は最低賃金が2025年7月から22.50ドルに、その後3年間で2.5ドルずつ引き上げられることとなる(「デイリー・ブリーズ」紙電子版5月23日)。2026年7月から25ドル、2027年7月から27.50ドル、2028年7月から30ドルとなる見込みで、3年間で48%増加する。

対象となるホテル・空港従業員に対しては、2026年1月から医療手当として、1時間当たり8.35ドルを支払うことが求められる。

ホテル経営者や空港運営事業者はこの賃上げ案に対して、観光産業が厳しい状況にある中で人件費の上昇を招き、一部の事業の閉鎖を余儀なくさせる可能性があると批判している。全米ホテル・宿泊協会のロザンナ・マイエッタ最高経営責任者(CEO)はこの賃上げ案に対して、「ロサンゼルスのホテル従業員は全米で最も高い賃金を支払われているが、現在、彼らの雇用は危機に瀕している」と現状を指摘した上で、今回の条例について「観光関連の税収を壊滅させ、2026年の(サッカー)ワールドカップ、2027年のスーパーボウル、2028年のオリンピック開催に不可欠なホテルの閉鎖につながるだろう」と述べている。また「ロサンゼルス・タイムズ」紙(電子版5月13日)によると、ヒルトン・ロサンゼルス・ユニバーサル・シティーホテルを運営するサンヒル・プロパティーズはオリンピック開催に合わせてホテルを増築する計画を立てていたが、ホテル従業員の最低賃金引き上げが承認された場合、同社は「オリンピックの客室供給事業から間違いなく撤退するだろう」とコメントしている。

(注)60室以上の客室を有するホテルが対象。

(堀永卓弘)

(米国)

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