ブラジル産鶏肉のチリへの輸入停止、影響は限定的か
(チリ、ブラジル)
調査部米州課
2025年05月26日
チリのエステバン・バレンスエラ農業相は5月22日、ブラジルでの鳥インフルエンザ発生に伴い、同国からの鶏肉、鶏卵といった食品の輸入を停止する措置(注1)について、会見を行った。バレンスエラ大臣は、ブラジルからの鶏肉輸入はチリの鶏肉輸入全体の7割を占めていると説明した上で、チリにとって第2の鶏肉供給国の米国(全体の25%を同国から輸入)や、自由貿易協定(FTA)を締結しているメキシコ、コロンビアといった国々からの代替輸入によって、今後のサプライチェーンへの影響を最小限にとどめる方針を示した。
また、国内の卸売業者や小売業者などとも連携しつつ、鶏肉の供給減による価格高騰を避ける調整を進めるとも発表した。さらには、今回の鳥インフルエンザがブラジル南部リオ・グランデ・ド・スル州で発生したことに触れ、将来的にはブラジルからの輸入停止措置の対象を全量ではなく、部分的なものとするためにも、相手国政府とともに危険地域のゾーニングを行うことに言及した。
鶏肉、鶏卵とも、国内でも相当量生産
鶏肉輸入の大部分をブラジルに依存するチリだが、輸出業者の業界団体のチレ・カルネ(CHILE CARNE)によると、2024年のチリにおける若鶏(Pollo)と七面鳥(Pavo)の生産量の合計は約75万トンで、輸入量の約14万トンを大きく上回っている(注2)。
鶏卵についても、チリは輸入全体の9割超をブラジルから調達しているが、同輸入量はチリ国内の鶏卵生産量の2~3%程度にすぎず、国内の鶏卵価格への影響や、サプライチェーンへ影響は限定的とみられている。
(注1)鳥インフルエンザ発生についてのブラジル政府の発表は5月16日付、チリ政府による輸入停止についての発表は5月17日付。
(注2)輸入量とほぼ同水準の約15万トンが輸出され、国内消費量は約73万トンとされている。
(佐藤竣平)
(チリ、ブラジル)
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