EV販売台数は増加の一途、2024年は25%超増の1,750万台、IEA報告
(世界)
調査部国際経済課
2025年05月19日
国際エネルギー機関(IEA)は5月14日、「世界EV見通し2025」を発表した。2024年の世界の電気自動車(EV、乗用車のみ)新車販売台数は前年比25%超増え、1,750万台となった(注)。伸び率は前年(35%増)を下回ったが、全新車販売台数に占めるEV比率は22%と、前年(18%)から拡大した。
2024年のEV販売台数を主要国・地域別にみると、中国が前年比約40%増の1,130万台と最も多く、欧州が前年比ほぼ横ばいの318万台、米国が前年比約10%増の152万台だった。中国は依然としてEV市場を牽引している。欧州での伸びの停滞は、補助金の段階的な廃止と、EUの自動車の二酸化炭素(CO2)排出目標が2024年まで据え置かれたことが要因と分析する。
IEAは、中国、欧州、米国の3大市場以外で販売台数が40%近い増加の130万台に達し、米国のEV販売台数に迫る記録的な伸びを見せた点を強調した。アジアと中南米の新興国が新たな成長市場となりつつあるという。東南アジアではEV販売台数は50%近く増加し、同地域の自動車販売台数の9%を占めるまでになった。特にタイとベトナムでシェアが高い。中南米最大の自動車市場ブラジルでは、2024年のEV販売台数が2倍以上の12万5,000台となり、販売シェアは6%を超えた。タイとブラジルでは、EV販売全体の85%を中国からの輸入車が占めた。ベトナムでは地場系財閥ビン・グループの自動車部門のビンファストを中心としたEVメーカーが国内EV市場のシェアの大半を有する。
EV価格は特に中国で低下が進んでいる。中国では2024年に販売されたEVの3分の2が購入補助金なしでも同等クラスの内燃機関車(従来型自動車)より低価格だった。しかし、他の多くの市場では、EVの販売価格は依然として従来型の自動車を上回る。例えば、ドイツでは、バッテリー式電気自動車(BEV)の平均価格は従来型自動車よりも約20%高く、米国では約30%高い。
また、IEAは今回のレポートで、EVと従来型自動車の「燃料」コストの比較を行ったという。その結果、現在のエネルギー市場価格を基準にすると、EVの充電コストは多くの市場でガソリン価格よりも一貫して割安となった。原油価格が1バレル40ドルと仮定し、現在の家庭用電気料金に基づき、家庭充電のEVを走らせる場合、欧州では従来型自動車を走らせる場合の約半分のコストで済むと試算される。
IEAのファティ・ビロル事務局長は「大きな不確実性(貿易・産業政策の見通しの不透明感、経済見通しの下振れリスクなど)にもかかわらず、EVが世界的に力強い成長軌道を維持している」と述べ、「多くの新興国でEV販売の成長が加速することにより、2025年は世界で販売される自動車の4台に1台以上がEVになると予想される」との見方を示した。IEAは今回の見通しで、2025年のEV販売台数は世界で2,000万台を超えると予測している。
(注)バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の合計。
(板谷幸歩)
(世界)
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