UAE経済、原油価格下落と中東経済減速見通しで先行き不透明

(アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC)、MENA)

ドバイ発

2025年05月12日

原油価格の下落と世界経済の停滞懸念の影響が、アラブ首長国連邦(UAE)の経済にも及ぶ懸念が出てきている。原油価格は、WTI原油が5月5日の取引で1バレルあたり50ドル台半ばまで下落した。5月7日現在は60ドル前後で推移している。米国のドナルド・トランプ大統領による相互関税導入発表以前は、2025年の石油需要の伸びはゆるやかになると予想されていたが、不確実性の高まりによる世界経済の停滞の影響が石油需要の低下を招くことが懸念されている。

OPECプラスは5月3日、6月の生産量を日量41万1,000バレル増産すると発表した。減産調整を解除し増産にかじを切っていることも価格押し下げ要因になるとみられる。原油価格の下落は、湾岸協力会議(GCC)諸国の財政を圧迫するとみられる。ドバイ首長国の主要金融機関であるエミレーツNBDのレポートによると、カタールを除くGCC諸国の財政損益分岐点となる原油価格の加重平均は1バレルあたり74ドルで、取引価格がそれを下回る可能性が高まっていると警告する。IMFによる2025年のUAEの財政均衡石油価格予測は50.4ドルとなっていることから、財政的な影響は早急には生じないとみられるが、価格の下げ幅が広がることによる歳入の減少がどこまで大きくなるかは不透明だ。

また、IMFは5月1日、中東と中央アジアの経済見通しを発表した。世界的な需要低下や貿易の不確実性の増大、原油価格の低下による産油国の経済停滞などを要因とし、中東・北アフリカ(MENA)地域は、2025年の成長率見通しが前回2024年10月時点の4.0%から2.6%に、UAEは5.1%成長予測から4.0%にそれぞれ下方修正された。

(清水美香)

(アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC)、MENA)

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