国際港湾倉庫労働組合が関税政策を非難する声明を発表
(米国)
ロサンゼルス発
2025年05月07日
国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)は4月28日、トランプ政権による関税政策を非難する声明を発表した。声明では、無謀で近視眼的な関税政策は、米国の労働者を壊滅させ、経済の重要なセクターに打撃を与え、勤勉な家庭を犠牲にして富裕層の懐を肥やしはじめていると主張。また、関税政策が同盟国の不信感を募らせ、地政学的緊張を激化させているとしつつ、労働者階級への直接的な攻撃にほかならず、断固として反対すべきと述べている。
声明では、最近、中国に対して課された関税は事実上の貿易戦争を引き起こしたと言及している。何十万もの雇用が世界貿易に依存しており、世界の2大経済大国間の貿易が縮小すれば、関連する労働者の壊滅的な失業につながる可能性があると指摘。例として、海運大手の中には、関税政策への対応として輸送ルートを廃止する例もあると紹介されている。加えて、燃料費や建設資材費の上昇といった関税の間接的な影響により、企業は適応に苦慮し、既に人員削減に動いているという。
また、関税によって食料品、ガソリン、家庭用品の価格が上昇し、家庭は生活必需品やサービスへの支出に年間1,600ドルの追加負担を強いられるとの推計を紹介している。現在、米国は住宅危機に陥っている中で、建設コストを上昇させる関税はこの危機をさらに加速させるだけと指摘。さらに、2018年と2019年に米国が中国からの輸入品に関税を課した際、これらの関税は米中貿易収支に大きな変化をもたらさず、むしろ輸入価格が米国の消費者に転嫁されたと述べている。これを踏まえ、企業は記録的な利益を上げ続ける一方で、消費者にコストを転嫁することは明らかであり、生活に苦しむ家庭は食料品、自動車ローン、日用品の価格高騰に見舞われるとしている。
(堀永卓弘)
(米国)
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