習国家主席、2026年以降の次期5カ年規画に関する座談会を主宰、策定の方向性を示す
(中国)
調査部中国北アジア課
2025年05月02日
中国の習近平国家主席は4月30日、2026年以降の5年間の長期計画となる「第15次5カ年規画(以下、15・5規画)」期間の経済社会発展に関する座談会を上海市で主宰し、重要講話を行った。同座談会には、李強首相、蔡奇中国共産党中央政治局常務委員のほか、上海市共産党委員会の陳吉寧書記をはじめ、内モンゴル自治区、浙江省、湖北省、広東省、四川省、甘粛省の各共産党委員会の書記が出席した。
習国家主席は、15・5規画の策定に当たっては、国際情勢の発展や変化が自国に与える影響を先取りして把握しつつ、状況を活用して経済の調整・最適化を行うべきと述べた。また、自らがなすべきことを揺るがずに行い、ハイレベルの対外開放を拡大し、雇用・企業・市場・マインドの安定化のために各種措置を実施して経済基盤を効果的に安定させることにより、質の高い発展を全面的に推進すべきとした。
発展と安全保障の両立については、よりいっそう重視するとした。国内外のリスクや課題を総合的に考慮し、国家の安全保障システムを整備し、安全を維持する能力を高め、高いパフォーマンスのガバナンスによって質の高い発展と高いレベルの安全の好循環を促し、新しい発展局面を新しい安全によって保障すべきと指摘した。
また、同規画の時期には、各地の事情に応じた「新質生産力」(注1)の発展に、より突出した戦略的位置付けを与えるべきとした。実体経済を基盤とし、科学技術イノベーションに牽引される現代化産業体系の建設においては、伝統産業の構造転換を全面的に推進し、新興産業を積極的に発展させつつ、未来産業(注2)を先取りして配置すべきと強調した。
イノベーションについては、国家のイノベーションシステムを整備し、各主体の活力を喚起し、世界の最先端のテクノロジーをベンチマークし、基礎研究を強化し、オリジナルなイノベーション能力を高め、重要コア技術や先端技術のブレークスルーにおける課題克服を図り、新質生産力を発展させる基礎的・戦略的な支えとなる教育・テクノロジー・人材を一体的に発展させると表明した。
さらに、中国式現代化は人民全体の共同富裕による社会主義現代化であると指摘し(注3)、発展の中で市民生活を保障・改善し、共同富裕を漸進的に推進していくとした。地域間の協調発展や貧困脱却の成果の定着、農村の全面的振興と都市・農村の融合発展、農業・農村の現代化推進、住民所得の着実な引き上げなどにも言及した。
(注1)中国中央電視台(CCTV)の解説によると、新質生産力とは、技術の革命的なブレークスルー、生産要素のイノベーティブな配置、産業構造の深い転換・レベルアップにより生み出される先進的な生産力とされる。
(注2)未来産業については、工業情報化部などが2024年1月29日、「未来産業の革新的発展の推進に関する実施意見」を発表し、同産業の発展に係る2025年までと2027年までの2つの目標を掲げたほか、重点6分野として製造、情報、材料、エネルギー、空間、ヘルスケアを挙げ、技術イノベーションと産業育成などを推進する方針を明確にした(2024年2月7日記事参照)。
(注3)2024年7月に開催された中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会、2024年7月23日記事参照)において採択された「改革のさらなる全面深化と中国式現代化の推進に関する決定」(2024年7月25日記事参照)では、2035年までに高水準の社会主義市場経済体制を完全に確立し、国家統治体系・統治能力の現代化や、社会主義現代化を実現させるとしている。
(小宮昇平)
(中国)
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