第34回日智経済合同委員会、不安定な国際情勢における日本とチリの連携がカギに

(チリ、日本)

企画部企画課

2025年05月16日

日本とチリとの第34回日智経済委員会が5月13日、大阪で開催された。同委員会には、チリのホセ・ミゲル・カストロ下院議長、リカルド・ロハス駐日チリ大使らが参加した。今回の委員会では、経済連携の一層の強化、脱炭素化社会に向けた連携の加速、重要鉱物などの分野おけるサプライチェーン強靭(きょうじん)化と新たな分野における連携の模索、関西を拠点とするライフサイエンスや先端技術関連のスタートアップ企業との連携の可能性などについて議論が行われた。

同委員会では、「ビジネス環境」「気候変動対策におけるビジネスの役割」「先端技術(AI等)のビジネス活用」の3つの議題が設定された。「ビジネス環境」のセッションでは、インド太平洋問題研究所の簑原俊洋理事長が、米国の第2次トランプ政権が世界に与える影響について、政権内に存在する派閥ごとの特徴を踏まえて分析した。同政権が強硬的な対外政策を採る場合や、アジア太平洋地域に無関心になる場合を想定し、日本は、チリのような、長い友好関係があり、共通の価値観を有する国と「ミニラテラル(注)」の枠組みを増やし、安全保障上や経済上の米国への依存度を下げるべきと述べた。その後、チリの元経済・振興・観光相のホセ・ラモン・バレンテ氏がチリのビジネス環境について、同国の強み、これまでに起きた問題、今後対応すべきこと、今後期待されることなどの切り口で紹介した。チリの強みとして、(1)安定した民主主義、(2)自由で開かれた経済、(3)中央銀行の独立性、(4)健全な財政政策を挙げたが、ここ数年に起きた問題として、2019年の反政府デモ、憲法改正の失敗、新型コロナ禍における年金早期引き出し政策のような大衆迎合的な政策を挙げた。2018~2019年に経済・振興・観光相を務めていたバレンテ氏は「このような問題が起きた要因は、政権交代の度にイデオロギーが左右に振れ、政治的なコンセンサスが存在していなかったことだった」と述べた。しかし、コロナ禍を経て、自由貿易志向の政策への支持が高まったり、次期大統領選挙の候補者が以前よりもビジネス推進派の支持率が高かったりするなど、データを用いて、政治家や国民の意識が変化していることを示した。

「気候変動対策におけるビジネスの役割」と「先端技術(AI等)のビジネス活用」では、テーマごとに両国の登壇企業が自社の事業例を紹介した。

また、本委員会の開催に先立ち、5月12日には、ガブリエル・ボリッチ大統領による委員会企業との懇親会が開催された。ボリッチ大統領によるあいさつでは、「国際情勢が揺らぐ中、128年に及ぶ長年の友好関係があり、共通の価値観を共有する日本との関係をより一層重視したい」と述べた。

(注)日・米・オーストラリア・インド(QUAD:クアッド)のような、数カ国間国で構成される協力枠組み。

(小西健友)

(チリ、日本)

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