スマート介護を目指す日系企業の挑戦
(中国)
青島発
2025年05月22日
中国の山東省では、「スマート看護」「スマート医療」「スマート見守り」「スマート食堂」などのスマート介護システムを導入したスマート養老院を2025年末までに100カ所以上整備することを計画(注)している。こうした政策を追い風に、日本の介護IT企業がサービスを展開し、存在感を高めている。ベストスキップ(所在地:東京都品川区)の高松光代表取締役CEOに取り組みの現状や課題と展望などについて聞いた(5月17日)。
(問)中国での取り組み状況は。
(答)山東省済南市では、2022年5月に極躍信息科技(済南)を設立し、スマート介護事業を展開するほか、新商品の研究開発、日本企業からのオフショア開発を行っている。江蘇省徐州市では、2024年7月に極躍信息科技(徐州)を設立し、スマート介護事業を展開している。スマート介護事業は、介護施設の運営に必要な入退院やケアプラン、従業員の勤怠管理、費用計算などの機能を1つにまとめた「躍百歳」と呼ばれるITプラットフォームを提供している。これまでに山東省や浙江省、江蘇省の複数の介護施設で導入された実績がある。新商品として、AI(人工知能)を活用した人の転倒検知システムを研究開発中だ。
(問)中国ビジネスの課題と展望は。
(答)中国は介護保険制度を整備している最中で、日本と比べるとビジネスをしづらいところがある。しかし、今後は日本と同様にハード面、ソフト面ともに整備されることが見込まれている。約3億人の60歳以上の高齢者をターゲットに、いかに取り組んでいくかを模索している。システム開発だけに限らず、例えば介護要員の育成とかも取り組んでいきたい。地元政府とは、介護要員の日本への派遣、日本企業のトレーナーを中国に派遣してもらうことを検討している。また、現地の学校との連携も考えている。
(問)山東省の地方政府からは、優れた介護技術を持った日本企業と連携していきたいとの要望が寄せられるが、中国の介護市場に参入しようとする日本企業へのアドバイスは。
(答)日本には行間を読むという言葉あるが、日本と中国は習慣や考え方が全然違うので、中国のことを熟知している人と一緒に肩を組んでやっていくことをお勧めする。特に介護産業は行政機関との関係が深いので、一般のビジネス経験だけでは計り知れない部分がある。相手が何を期待しているのか見極められると、次にどう動くかべきか判断しやすいと思う。
徐州市の新会社を紹介する高松光代表取締役CEO(ジェトロ撮影)
(注)「山東省における質の高い高齢者介護サービスの発展に向けた3カ年行動計画(2024~2026年)」(魯政弁字〔2023〕207号)を参照。
(皆川幸夫)
(中国)
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