インド政府、成長促進目的での養殖水産物への抗微生物薬剤使用を全面禁止

(インド)

ニューデリー発

2025年05月09日

インド商工省は5月1日、輸出(品質管理・検査)法(1963年)に基づく省令を改正し、養殖エビや白身魚など水産物の生産・加工工程で抗微生物薬剤(Antimicrobial)使用を大幅に制限すると発表した(添付資料参照)。今回の改正は、2015年5月に世界保健機関(WHO)で採択された「薬剤耐性(AMR)に関する国際行動計画」を国内制度に落とし込むもので、薬剤耐性対策を輸出競争力確保の観点から前倒しで実施する狙いがあると考えられる。

改正条項では、養殖水産物の成長促進・歩留まり改善を目的とした抗微生物薬剤使用を全面禁止するとともに、カルバペネム系やグリコペプチド系などを含む18類型の広範な抗生物質、18種類の抗ウイルス薬、抗原虫薬ニタゾキサニドを列挙し、ふ化場や、飼料製造、前処理、加工施設などを含むサプライチェーン全段階での使用を禁じた。違反製品は輸出検査審議会(EIC)により不適合とされ、輸出許可が下りないほか、度重なる違反に対しては、リコールや行政処分など罰則の対象となり得る。現地の法務アドバイザリーメディアの記事では、より持続可能で責任ある養殖手法への転換を要求する今回の改正は、インド現地生産者・加工業者に少なくない負担を生じさせる懸念があると指摘されている(「リーガリティー・シンプリファイド」5月2日)。

インドの2023年度(2023年4月~2024年3月)の水産物輸出額は、6,052億ルピー(約1兆288億円、1ルピー=約1.7円)で、2023年度実績(同6,397億ルピー)を下回ったが、数量では過去最高の輸出数量178万トンを記録した。品目別では、冷凍エビが数量比で全体の40.2%、金額比で全体の66.1%と首位を占めている。水産物全体の主要輸出先3カ国は米国(輸出総額の34.5%)、中国(同18.8%)、日本(同5.4%)だ。日本にとっても、インドはベトナム、インドネシアと並ぶエビの主要供給源になっている。

(樋口史紀)

(インド)

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