特別休暇の不正取得、公的機関で2万人超か

(チリ)

調査部米州課

2025年05月29日

チリのマリオ・マルセル財務相は5月27日、公的機関の職員による、医師の診断に基づく特別休暇(Licencia Médica)の不正な取得に関する調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これに先立って、会計検査院は同月20日、国内の公的機関で勤務経験を持つ2万5,078人(注1)が先述した特別休暇を不正に取得した可能性(注2)を指摘外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。

マルセル財務相によると、会計検査院の指摘の対象となった2万5,078人のうち、7,990人がいずれかの省庁で勤務経験を持ち、うち6,592人を対象とする起訴手続きを政府が既に開始している(注3)。省庁ごとの内訳を見ると、特に教育省(2,514人、全体の38.1%)と保健省(2,082人、同31.6%)での発生が圧倒的に多い。マルセル大臣は今回の財務省による調査、起訴手続きについては、同省が所管する中央政府の職員のみを対象としており、地方自治体や他の行政機関は対象外と言及した。その上で、それら機関とも足並みをそろえつつ、不正に受給された給与の返還などを国全体として適切に実施するとした。

2025年11月の大統領選にも影響か

特別休暇の不正取得に関する調査結果は、地方自治体からも続々と発表されている。とりわけ、2024年10~11月の知事選挙(2024年11月29日記事参照)によって首長となった野党側のセバスティアン・シチェル氏(ニュニョア区長)やマリオ・デスボルデス氏(サンティアゴ区長)は、今回の問題への対応をきっかけに、自身の前任者を含む与党陣営への批判を強めている。

ガブリエル・ボリッチ大統領は一連の騒動についてコメントを求められた際に、不正を行った関係者に対しては、例外なく起訴を行う姿勢を示している。他方で、次期大統領選(投票日:2025年11月16日)に向けた世論調査(2025年5月20日記事参照)で支持率トップのエブリン・マテイ氏(野党連合から立候補)が不正な特別休暇を取得したというフェイクニュースがX(旧Twitter)上で拡散されるという事態も生じている。

(注1)件数ベースでは3万5,585件で、1人が複数回にわたって不正な取得を行ったケースが含まれる。

(注2)会計検査院による指摘の対象者は、健康上の理由によって取得した特別休暇の期間中に国外への渡航履歴が確認されていた。

(注3)調査の開始時点で省庁を退職していた職員や、別件で起訴の対象となっている職員などは除かれている。

(佐藤竣平)

(チリ)

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