APEC貿易担当大臣会合が開催、多角的貿易通じた接続性やデジタル・AIの重要性などで合意

(韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ロシア、日本、ブルネイ、パプアニューギニア)

ソウル発

2025年05月20日

韓国・済州特別自治道で5月15~16日の2日間、APEC貿易担当大臣会合が開催された。韓国の鄭仁教(チョン・インギョ) 産業通商資源部通商交渉本部長が議長を務め、日本から大串正樹経済産業副大臣と宮路拓馬外務副大臣が参加し、APEC加盟の21カ国・地域(エコノミー)に加え、WTOやOECDといった国際機関なども参加した。

会議では「貿易円滑化のためのAI(人工知能)イノベーション」「多角的貿易体制を通じた接続性」「持続可能な貿易を通じた繁栄」のテーマで精力的な議論が行われ、成果文書として共同声明と議長声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが発出された。

また、会合期間中に大串経済産業副大臣と各エコノミー代表(注1)との2国間会談も行われた。特に議長国・韓国との会談では、APECの成功に向けて協力していくと述べたほか、日韓国交正常化60周年を契機として協力していくことを確認した。中国とは、邦人の安全確保や、日本産水産物の輸入回復の早期実現、中国の輸出管理措置の運用適正化などを求め、今後も緊密に意思疎通を重ねていくことを確認した。

韓国も会合期間中に各エコノミー代表(注2)やWTO代表との2者間会談を行った。中でもジェミソン・グリア米国通商代表部(USTR)代表とは、15日に鄭本部長と会談を行った後、16日には安徳根(アン・ドックン)産業通商資源部長官とも会談を行い、2日連続で米国の関税措置に関して協議した。その結果、5月19日の週に第2回技術協議(Technical Discussion、注3)を開催し、6つの分野(注4)について本格的に協議していくことで合意した。また、中国とは2国間のさまざまな課題やグローバルな通商上の懸念事項について意見を交わした。その結果、両国はAPECなど多国間体制での協力と重要鉱物供給網の安定化について合意し、韓中FTA(自由貿易協定)のサービス・投資フォローアップ交渉の加速に向けて努力していくこととした。

韓国の聯合ニュース(5月16日)は鄭本部長のコメントとして、「グローバル通商環境に対する見解の差が大きい中で、今回の会合で合意を導き出すことは、議長である私をはじめ、20人の加盟国の貿易担当大臣と約100人の共同宣言文交渉チームにとって大きなチャレンジだった」と紹介した。

2025年のAPEC首脳会合は10月末から11月初めにかけて、韓国慶尚北道慶州市で行われる。今回の成果も首脳会合に盛り込まれる予定だ。

(注1)韓国、ニュージーランド、メキシコ、中国、香港(開催日時順)

(注2)フィリピン、メキシコ、パプアニューギニア、中国、マレーシア、ベトナム、香港、ニュージーランド、米国、台湾、インドネシア、日本、カナダ、チリ

(注3)第1回は5月1日に実施された。技術協議は、交渉の前段階として両国の実務担当者が争点を整理し、交渉の方向性を調整する準備会合と位置づけられている。

(注4)バランスの取れた貿易、非関税措置、経済安全保障、デジタル貿易、原産地、商業的配慮の6分野。

(橋爪直輝)

(韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ロシア、日本、ブルネイ、パプアニューギニア)

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