米ニューロ、日本で自動運転配送車の実証開始へ
(米国、日本、英国)
サンフランシスコ発
2025年04月24日
米国で自動運転デリバリー車を開発するスタートアップ、ニューロ(本社:カリフォルニア州マウンテンビュー)は4月15日、数週間以内に日本での走行テストおよびデータ収集を開始すると発表した。同社にとって初の海外展開となり、日本特有の交通環境に対応した自律走行技術の改良、適応を目的としている。テストでは、交通状況や道路構造などのデータが収集される。
ニューロはもともと、ラストマイル配送向けの自動運転デリバリー車の開発から事業をスタートさせたが、近年は自社の自動運転システム「ニューロ・ドライバー」を自動車メーカーやモビリティ事業者にライセンス提供するビジネスモデルへと移行している。第4世代のニューロ・ドライバーハードウエアは、複数の車両タイプに対応し、人工知能(AI)主導によるレベル4(注)自動運転を実現可能とする設計となっている(2024年3月4日記事参照)。
同社は、ニューロ・ドライバーを搭載したプリウスを全米59都市に展開し、手動運転による走行を通じてデータを収集してきた。道路構造、気象条件、地域ごとの運転スタイルの違いに対して車両がどのように反応するかを記録し、AIモデルを強化するためのデータセットを構築している。
同社は4月9日、最新の資金調達ラウンドで1億600万ドルを調達し、企業評価額は60億ドルに達したと発表した。同ラウンドには、T・ロウ・プライス、フィデリティ、タイガー・グローバル・マネジメント、グレイロック・パートナーズ、XN LPなど既存の機関投資家や戦略的パートナーが引き続き参加している。
また、ソフトバンクグループおよびトヨタグループも、同社の成長を支える戦略的出資者だ。ソフトバンクは、2019年にビジョン・ファンド1を通じて9億4,000万ドルを出資し、2021年のシリーズDラウンドにも追加出資を行った。トヨタグループの投資部門であるウーブン・キャピタルは、2021年に設立後初の投資先としてニューロを選定している。
テッククランチ(4月9日)は、ニューロの新たなビジネスモデルは、個人向け自動運転車から無人自動運転タクシーまで幅広い技術を展開する英国のスタートアップ、ウェイブのような企業と競合関係に入ることを意味する、と指摘している。ウェイブは4月22日、横浜にテストおよび開発拠点を設立したと発表し、同社として初めてアジア市場に進出した。また、日産自動車は4月10日、2027年度に導入予定の次世代運転支援技術に、ウェイブが開発した自動運転ソフトウエアを採用すると発表した。ウェイブは2024年、エヌビディア、マイクロソフト、ソフトバンクなどから10億5,000万ドルを調達したと発表している(2024年5月13日記事参照)。
(注)自動車技術者協会(SAE)が定義する自動運転のレベル。レベル4では、限定された領域内で加速・操舵(そうだ)・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態での走行が可能。
(松井美樹)
(米国、日本、英国)
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