メキシコ経済省、ACE55号のブラジル向け自動車部品の原産地規則を再整理
(メキシコ、ブラジル)
調査部米州課
2025年04月02日
メキシコ経済省は3月26日、国家貿易情報システム(SNICE)で公文書(Oficio No.516.2025.0970)を公示し、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)経済補完協定55号(ACE55号)付属書II(通称「メキシコ-ブラジル自動車協定」)の自動車部品の原産地規則の解釈を再度整理した。完成車メーカーに純正部品として供給する目的で輸出される自動車部品の原産性の判断を厳格化した2024年9月9日付公文書(2024年9月12日記事参照)の効果を取り消し、協定を用いて相手国に輸出する自動車の組み立てに用いられる部品に限り、緩やかな基準で原産地証明書を発行することを明らかにした。2024年9月の公文書の内容には条文解釈の観点から矛盾があり、事業者の混乱を招いた。今回の公文書ではあらためて、次の基準を用いて自動車部品の原産性を判断し、原産地証明書を発行することとした。
- ブラジルに輸出される補修用途ではないメキシコ製純正部品であり、後にメキシコに輸出される自動車(完成車)のブラジルでの組み立てに用いられる場合に限り、第5次追加議定書の第5条の規定(ACE55号別添IIの第1パラグラフに規定された基準(注1)を用いて原産品かどうかを判断できる。
- 後にブラジルに輸出される自動車(完成車)のメキシコにおける組み立てに用いられるメキシコ製自動車部品の原産性を判断する際には、上記と同じ基準を用いることができる。
- 自動車部品として直接ブラジルに輸出される補修部品を含むメキシコ製自動車部品については、引き続き第7次追加議定書第4条に規定された域内原産割合(RVC)(注2)が40%以上という基準を用いて原産品登録を行うことができる。
ブラジルからメキシコに輸出される自動車向けの場合は原産地規則が緩やかに
上記1.~3.の判断基準のうち、2.および3.は従来から実質的な変更がない。1.については、原産地規則が大幅に簡素化されることとなる。ただし、同判断基準について、ブラジル政府当局が合意しているかどうかは不明であり、ブラジル税関による原産性の確認(検認)対象となり、その中で異なった判断基準が示された場合、原産地規則を満たしていないとして関税が追徴されるリスクは残る。
国立統計地理情報院(INEGI)のデータによると、2024年にブラジルからメキシコに輸入された自動車は、ステランティスの8車種(クライスラー4車種とフィアット4車種で合計2,656台)、ゼネラルモーターズ(GM)の3車種(合計2,975台)、ホンダのシティ(497台)、現代の2車種(合計363台)、プジョーのパートナー・ラピッド(202台)、ルノーの4車種(合計2,052台)、フォルクスワーゲンの4車種(合計1,847台)、合計で1万592台だ。これらの車両の組み立てに用いられる自動車部品をメキシコから輸出する場合、経済省は緩やかな基準の下で原産判定を行い、原産地証明書を発行することとなる。
(注1)メキシコ-ブラジル自動車協定の第5次追加議定書の第5条は、完成車製造に用いる自動車部品を原産部品と判断する基準としては、協定別IIの第5条第1パラグラフの規定を用いるとしている。つまり、製品とそれを生産するために用いる非原産材料の間に4桁レベルの関税分類変更があること(CTH)、あるいは、製品の生産に用いる非原産材料の価格が製品価格の50%以下(控除方式のRVCで50%以上)のいずれかで原産品となる。
(注2)第7次追加議定書の第4条が定めるRVCは、積み上げ方式のRVCで、製品の価格に占める原産材料の価格で計算する。「材料」の価格しか計上できず、非材料費(労務費や製造経費など)がRVCに含まれないため、非常に厳しいルールだ。
(中畑貴雄)
(メキシコ、ブラジル)
ビジネス短信 fba466896f613129