ホーチミン市に日本産水産物を用いた焼き魚専門店が開業

(ベトナム)

ホーチミン発

2025年04月25日

日本から輸入した生食用の鮮魚を専門の焼き師がロースターであぶって提供するレストランの「焼うお いし川サイゴン」が2024年12月、ベトナム・ホーチミン市1区の日本人街(タイバンルン通り)に開業した。東京・築地に本店を構える「焼うお いし川」の初の海外店舗となる。

代表を務めるファン・バン・ラン氏はベトナムへの進出を決めた背景として、刺し身を苦手とする人がまだ多い点を挙げた。刺し身を焼き肉のようにあぶって提供する、肉を焼かない焼き肉「焼うお」というコンセプトならば、刺し身が苦手な人にも日本産水産物の魅力を体験してもらうことができると考え、開業に至ったという。夜はコース中心で客単価は日本円で1万円を超え、現地では高価格帯レストランに分類されるが、刺し身が苦手な人がグループ内にいても鮮魚を楽しむことができる新たなスタイルが、ベトナム人富裕層を中心に注目を集めているという。今後の展望として、ハノイ市やダナン市などベトナム全土で5店舗の展開を目指している。

ラン氏は輸入卸の「ヤマナカマート」の代表も務めており、ホーチミン市内を中心に、上記店舗を含む約50店舗(うち約10店舗が日系)の飲食店に日本産水産物を卸している。仕入れは主に東京の豊洲市場や大阪市中央卸売市場から週に2回ずつ行い、計約1トンの鮮魚を輸入している。日本からの輸出は空輸を用い、仕入れ翌日の正午過ぎにはベトナムの各店舗に提供できるようにするなど、鮮度を最も重視しているという。ラン氏は「ベトナムの国内需要とインバウンドの増加による今後の景気に期待しており、日本産水産物の取扱量をさらに増やしていく予定」と意気込みを語った(取材日:2月19日)。

写真 刺し身をあぶる代表のラン氏(焼うお いし川サイゴン提供)

刺し身をあぶる代表のラン氏(焼うお いし川サイゴン提供)

写真 日本各地から取り寄せた鮮魚のあぶり(ジェトロ撮影)

日本各地から取り寄せた鮮魚のあぶり(ジェトロ撮影)

ヤマナカマートを九州に招聘

ジェトロでは2024124127日、ベトナム向け水産物の輸出拡大を図るため、ヤマナカマートの2人を長崎県と福岡県に招聘(しょうへい)した。同社の卸先4社も同行した。両県内の魚市場や輸出に取り組む水産事業者などを訪問し、生産地ならではのストーリーを知ってもらったほか、新たな関係構築を支援した。参加バイヤーからは、招聘を通じて特に関心を持った魚種として、トラフグ、アナゴ、ノドグロ、クエ、アマダイなどが挙がったほか、「鮮度の高さに驚いた」「今後は九州からの産地直送を実現したい」などいった声も聞かれた。

写真 長崎魚市場の視察(ジェトロ撮影)

長崎魚市場の視察(ジェトロ撮影)

(安部暢人)

(ベトナム)

ビジネス短信 e7bb2740a7d9502b