自動車関税による車両コスト増は総額1,077億ドル、米調査機関の試算
(米国)
ニューヨーク発
2025年04月18日
米国調査機関のセンター・フォー・オートモーティブリサーチ(CAR)は4月10日、1962年通商拡大法232条に基づく完成車と自動車部品に対する25%の追加関税の影響をまとめた報告書を発表した。分析は3月28日に実施され、2024年の米国生産・販売データを基に試算された(注)。
乗用車および小型トラックの輸入車両に対する追加関税は、2025年4月3日から適用されている。ただし、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の自動車原産地規則を満たす車両については、非米国産部品の価格に対してのみ追加関税が課される。また、自動車部品に関しては、5月3日から追加関税が発動される予定だが、USMCAの原産地規則を満たす部品については、非米国産部品のみに追加関税を適用するプロセスが確立するまで対象外となる(2025年4月3日記事参照)。
CARの報告書によると、自動車関税導入により米国内で生産された車両と輸入車両を合わせたコスト増は総額1,077億ドルに達する見込み。1台当たりの平均では、輸入車両に対する追加関税で8,722ドル、米国生産車両に含まれる部品に対する追加関税で4,239ドルのコスト増となる。ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスの「デトロイトスリー」に関しては、輸入車両で8,641ドル、部品では全社平均を上回る4,911ドルのコスト増となると分析した。
CARの研究担当上級副社長兼最高イノベーション責任者(CINO)のベンカテシュ・プラサド氏はプレスリリースで、「現代の自動車サプライチェーンはグローバルかつ複雑で、25%の追加関税が業界にもたらすコストという一見単純な問題を複雑にしている。自動車メーカーとそのサプライヤーは、世界中に拠点を持つ多国籍企業であることが多いため、車両の国内生産比率を把握することが困難だ」と指摘した。CARは、米国メーカー、外国メーカーを問わず、米国で販売される車両には例外なく外国製部品が使用されており、広範な影響が避けられないこと、また米国製車両に占める外国製部品の含有率は20~91%と幅が広く、メーカーやモデルごとに影響の度合いが異なるとも報告した。なお、今回の分析には、販売価格への転嫁による消費者価格の高騰や、メーカーの利益、車両需要への影響といった二次的な影響は含まれておらず、業界全体におけるコストはより増加する可能性もあるとみている。
(注)生産台数1,020万台、輸入台数750万台を前提に試算している。
(大原典子)
(米国)
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