IMF理事会がアルゼンチンへの支援を承認、世界銀行、米州開銀も支援へ
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年04月16日
アルゼンチン経済省は4月11日、IMFによる新たな融資の枠組みについて発表した。支援期間は48カ月で、返済期間は10年、元本の返済は4年半猶予される。IMFも同日、同理事会がアルゼンチンに対する拡大信用供与(EFF)措置に基づく約200億ドル(152億6,700万SDR、注)の支援を承認したと発表した。約120億ドル(92億SDR)の即時の払い込みが認められており、60日以内に約20億ドルが、年内に残りの約10億ドルが追加で払い込まれる予定だ。IMFの支援による経済プログラムの主な柱は、強固な財政基盤の維持、為替規制の段階的緩和と為替レートの変動幅の拡大による強固な通貨・為替体制への移行、幅広い構造改革の推進などとなっている。
世界銀行グループと米州開発銀行(IDB)も同日、IMFによる支援を補完するかたちで、アルゼンチンを支援すると発表した。世界銀行グループはアルゼンチンに対し、同国への民間投資誘致、雇用創出の促進を目的として、国際復興開発銀行(IBRD)、国際金融公社(IFC)、多国間投資保証機関(MIGA)を通じた120億ドルの支援パッケージを供与する。IBRDが融資する50億ドルは、雇用創出を促進する公共部門に拠出され、IFCが融資する55億ドルはインフラ、重要鉱物、アグリビジネス、エネルギーなどの分野における民間部門に拠出される。MIGAは、インフラへの民間投資を誘致するために、15億ドルの保証を供与するとしている。
IDBは、理事会が承認することを条件に、今後3年間にわたって公共部門および民間部門に対して最大100億ドルを融資する。支援初年度にアルゼンチン政府に対して30億ドルの融資を予定しており、そのかなりの部分が今後数カ月で実行される見込み。アルゼンチン政府によると、各機関による融資額のうち61億ドルが2025年内に払い込まれる見通しだ。いずれの機関も、ミレイ政権が進めてきた財政規律の維持と広範な構造改革を柱とする経済安定化計画による、急速なディスインフレと経済の回復を評価している。
IMF理事会による支援が承認されたことを受け、アルゼンチン中央銀行は、経済安定化計画が第3段階、すなわち資本取引規制を解除する段階に入ったと発表。ルイス・カプート経済相とサンティアゴ・バウシリ中銀総裁が記者会見で、4月14日から資本取引規制の段階的な解除と下限を1ドル=1,000ペソ、上限を1,400ペソとする為替バンド制の導入を開始すると発表した。ミレイ大統領も国民に向けた放送(カデナ・ナシオナル)において、国民のこれまでの我慢に謝意を示すとともに、IMFなどの支援により5月には外貨準備高が足元の250億ドルから500億ドルに倍増し、ペソに安定性を与えることができる、とした。
(注)Special Drawing Rightの略で、特別引出権。通貨ではないものの、その価値はドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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